Home 食・旅・カルチャー 地球からの贈りもの~宝石物語~ 日本人デザイナー

日本人デザイナー

令和になったと思ったら、あっという間に令和2年、2020年の幕開けとなった。十二支が新たに始まる子年であり、新しいディケイドの始まり。東京オリンピックイヤーとして、日本には益々飛躍の年となりますように。

昨年末の話になるが、嬉しい話題があったので、そちらの話から。実力、人気共にミレニアル世代を代表するような若手女優エマ・ストーンが婚約した。代表作は「ラ・ラ・ランド」だが、スパイダーマンのヒロイン役からゾンビ映画まで、活躍の幅は広い。お相手はサタデーナイトライブのディレクター。

左手の薬指の写真がインスタグラムにアップされた当初、光の加減からどんな指輪かはっきりと分からなかった。中央の石が眩いという感じではなかったので、ローズカットやオールドマインカットなど昔のカットではないかという憶測が飛んだ。しかし、別の角度からの写真なども出てくると、中央の石はダイヤモンドではなくパールだということが分かった。しかも、そのリングは「カタオカ」という日本人デザイナーのもの。この指輪の選択は、贈った方のセンスなのか、贈られたエマのセンスなのかは定かでないが、こういう形で日本人デザイナーの名前を聞くのはとても嬉しい。

1970年生まれの片岡義順氏が2011年にスタートさせたブランドで、日本とニューヨークにある店舗の他、計20店舗ほどで取り扱われている。

エマのパールのリングは中央に8㎜のアコヤパールの配された、パールスノーフレークリング・スプリームという品。ダイヤモンドが、中央のパールの周り東西南北の位置に、大きめのが4個にその間にそれぞれ一つずつで計8個ならんでいる。それに、ゴールドのアームには間隔をあけて片側に5個ずつで計10個配されている。ダイヤモンドの合計は0.37カラットとなっており、お値段は47万8千円で、25文字までの刻印が無料となっている。中央が0.3カラットのダイヤモンドバージョンは約85万円。

「ジュエリーは必需品でないところが魅力」と片岡氏が語るように、作品は古いおとぎ話に出てきそうなデザインが多い。財力や権力を誇示するためのジュエリーではなく、芸術を身にまとっている感じ。プラクティカルな私としては、繊細なパールの指輪では家事は出来ないとか、デザイン的に引っかかってしまいそうとか思ってしまう。でも、ゆっくりワインやコーヒーを楽しむ手元を飾り、ゆったりとした時間を楽しむには最高のお伴かもしれない。

片岡義順氏しかり、北斎のように海外で有名になってから日本で広まるデザイナーも少なくない。2010年のニューヨークのトランクショーでファッション関係者の目に留まり、2016年に表参道に旗艦店をオープンした、井上寛崇氏の「ヒロタカ」。バーニーズ・ニューヨークなどでも取り扱っており、片耳ずつ販売している様々なデザインのイヤーカフがとても新鮮。値段は200ドル弱ぐらいからと、それ程敷居は高くない。イヤーカフは耳の窪みに挟んだり引っ掛ける形になっているので、軟骨に穴をあけずとも耳の上側などに装飾を付けられる。

日本よりも米国での知名度が高いかもしれないブランドに「ミズキ」がある。長澤瑞氏が1996年に創業したブランドで、こちらもニューヨークがスタート。このブランドを有名にしたのは、当時大流行だったテレビ番組「フレンズ」のレイチェル役のジェニファー・アニストン。番組終了から15年程経つが今でもその人気は衰えず、昨年インスタグラムのアカウントを開設から5時間16分でフォロアーが100万人を超えてギネス記録になった程。ジェニファーがプライベートで身に付けた細い月の形のペンダントが米国の雑誌などでも取り上げられ、そしてその後日本の雑誌でもその名を見るようになった。

北斎に端を発した「ザ・ジャポニズム」のように、日本の職人の匠や美しさを感じる作品。自分だけのお気に入りを見つけるなら、こうした日本人デザイナーの作品から探してみてはいかがだろう。

金子倫子
80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。