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環境と健康

当地日系人、日系移民の健康調査をはじめ、移民生活や環境変化における健康状況、疾病の変化に関する研究を行ってきたパシフィックリム・疾病予防センターが27年間の活動を終えることになった。事務局長で研究長の行方令博士が21日、NVC記念会館で活動報告を含めた研究成果を発表した。

同センターは1989年に開設され、地元日系社会と日本の生活習慣や健康状態を比較することで、当地コミュニティーの環境と健康の関連性に関する調査を進めてきた。

21日には大きな研究プロジェクトだった日系移民の環境変化における健康状態、また胃がんリスクに関する調査結果が紹介された。

研究結果によると、日本人と日系人における健康の違いが様々な点で見られたという。特に食事の摂取面での違いが顕著で、当地生活者は野菜摂取量が少なく、また夕食の量も圧倒的に多いことが分かった。これによりコレステロールの数値などに大きな差が出ている。

環境の変化は、年を重ねて大きな差が生まれる。例えば階段の上り下り、床の立ち座りなど何気ない動きがある。車生活により、歩数が限られる生活環境も同様だろう。

同センターでは、胃がんの大きなリスクになるピロリ菌の人種別研究も行った。衛生環境に影響するとされ、アジア各地からの移民者に菌を持つ割合が高く、日本に至っては地方の高齢者に菌を持つ比率が高いという。

衛生面の向上は、環境改善を含め、様々なプラス方向へ作用し、健康状況も大幅に改善することがわかった。

第二次世界大戦下に生まれ、苦しい幼少時代を過ごした行方博士は、日本人の平均寿命が延びた要因に第二次世界大戦後のGHQによる政策を挙げる。男女平等の選挙権、農地改革、義務教育と各県に設置した国立大学など。また平和国家として生活、文化の享受を図ることもできた。

もちろん前述にあるように食も大きい。多くの人が十分に食べることのできる環境が整備された。

行方博士は、日本の平均寿命に見られる現在の成果は、70年前からの社会環境の結果で、今後、肉食や洋食環境の増えた新しい状況が数字に影響するのは先だろうと推測する。今ある数字に惑わされず、環境に応じ、日々の健康を心掛けたい。

(佐々木志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。