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第46回 12歳が見た商売の世界

先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)20年近い歴史の中で初の「親子のためのワクワク系セミナー」を開催した。といっても事業継承者向けのものではなく、いわゆる二世会のようなものでもない。今回受講した子どもたちは12歳から26歳まで。終了後のアンケートにあった彼らの率直なそして意欲的なワクワク系からの学びには、私も大いに刺激を受けた。

例えば、参加者中最年少のある12歳の女の子のアンケートにはこうあった。「おきゃくさんが来てくれるためには、商品の値下げなどが良いと思っていましたが、おきゃくさんと「きずな」を作ることが大切とわかり、これから店に来てくださるおきゃくさんと、きずなづくりをしていきたいと思いました」(原文ママ)。彼女は学校帰りにいつもお母さんが営むカフェを手伝っているそうだが、私からの質問にも元気に答えてくれた。ちなみに、彼女のお母さんが今年カフェをオープンした際、その1か月ほど前にすぐ近くにカフェがオープンしたのだが、そちらはもう閉店してしまったとのこと。「それはなぜだと思う?」という私の問いに、彼女はこう答えた。「どこにでもある普通のカフェだったから」。

また別の12歳の男の子のアンケートにはこうあった。「たくさん売るには値段や物ではなく、その売る物のよさを表示することと、きずなを大切にすることだとわかりました」「どんな会社でも、ちょっとした工夫をすることで右肩上がりになることがわかったので、ちょっとした工夫をどんどんしていきたいです」(原文ママ)。私がいったい彼らにどんな話をしたのか、ご興味があるだろうか? 実はそのほとんどは、普段講演で大人に話しているものと同じだ。事例も、表示されるスライドも、話す内容も。たしかに、相手に12歳もいることを意識して、いろいろ噛み砕きはしたが、主には難しい語句の説明であり、内容はしっかり大人向けである。

とりわけ印象深いことが2つある。ひとつは、彼らが口々に「値下げが効果的だと思っていた」と言ったことだ。いつそのような刷り込みが行われたのか不思議だが、彼らの親はワクワク系ゆえ、親によるものではない。今の社会のありようが、彼らにそういう世界を見せているのかもしれない。

もうひとつは、彼らが揃って(他の多くの子どもたちも)「わかった」「していきたい」と言ったことだ。一方各地で同じ内容の講演を聴いていただいた大人たちからしばしば聞かれる言葉は「難しい」。この言葉には、理解のことも実践のことも含まれているし、私も早とちりしてもらいたいわけではないが、この違いが、実は重要だ。これこそが、将来の道を分けるものなのである。

(小阪裕司)

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。