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第87回 「弊社にも本当に来ました」〜招客招福の法則

私が常々お伝えしていることの中に、「ワクワク系は科学である」、ひいては「商売とは科学である」がある。そのゆえんは、私が情報学の博士号を取得しており、その研究がワクワク系の背景にあることもあるが、何より「再現性がある」ことが科学たるところだ。そこで今回はそれを物語る事例をご紹介したい。

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある会社からいただいたご報告だ。

同社はテイッシュ、トイレットペーパー、おむつなどの衛生用紙や、印刷用紙、特殊紙の卸売り業。取り扱い商品の中には他社でも購入できるものが多く、いきおい価格競争になりがちな業種でもある。そんな同社でワクワク系にまい進するのは、同社の後継者でもある三代目。彼から最近いただいた報告書はこう始まる。「ワクワク系マーケティング実践会に入会し早7カ月。入会してDVDを見て『とりあえずなんかやる』という言葉に後押しされ、勢いでニューズレターを千通出したことが懐かしいです」。そしてしばらく読み進むとこういうくだりがある。「毎月の会報誌を読んでいるとお客様から手紙が来たと書いてあり、すごいなあと思っていたのですが」。

ここにある「お客様から手紙が来た」というのは、お客さんからいただくファンレターのようなもののことだ。当会にはそういうものをお客さんからいただくお店や会社が多く、その事例が当会の会報誌に頻繁に載るのである。そこで彼が「すごいなあ」という背景には、自社が卸売り業ということがある。取引先は法人であり、しかも先に述べたようなビジネス環境。一般の方を客とするレストランなどならファンレターが来ることも分かるが自分の会社には…、そう思うのも無理はない。しかしこの報告書はこう続いていた。「弊社にも本当に来ました」。

さらに彼は言う。「ビックリしたのは商品を購入いただいたのは我々なのに、このような直筆のお手紙が来たことです。まさか弊社にもハガキが来るとは。社内は盛り上がり、本当にこんな事が起こるのだと、ワクワク系マーケティングの再現性を実感しました。(弊社でこんなことが起きるのは初めてです)」

商売には再現性がある。ある結果——たとえばここで言う「お客さんからファンレターが届く」——を得たければ、その結果を生み出す原因となることを行えばよく、行いさえすれば同じ結果が出る。たとえ、自分の業界、仕事上では起こりえないと思うようなことでもだ。誰もお湯を沸かすのに、「自分には沸かせないだろう」とは思わない。実は商売も同じなのである。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。