招客招福の法則
筆者:小阪 裕司
あなたが自社製造販売の食品店主だとして、自慢の商品が大いに売れ残って、あと1日で通常の5倍を売らなければならないとしよう。あなたならどういう手を打つだろうか?
昨年の暮れ、ある店でそういうことが起こった。例年なら暮れも押し迫ると製造が間に合わなくなるほどの看板商品が、なぜか昨年に限って売れ行き鈍く、店主はそれでも、12月30、31日の2日間で一気に売れるだろうと考えていた。
しかし、30日も例年の半分程度しか売れず、例年通りの量を製造していたことから、この時点でまだ220個が売れ残っていた。ちなみに、昨年の31日の販売個数は87個。今年の売れ行きは昨年の半分のペースのため、このまま何もしなければ40個程度の売上となる。となると、180個も売れ残ってしまう。
しかもこの商品は賞味期限が短い。ここでなんとか、たった1日の残されたチャンスではあるが、起死回生のホームランをかっ飛ばし、5、6倍を売る仕組みを考えなければならない。
そこで、近年ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)を鋭意取り組む店主は考えた。かくも今年売れていないのは、動機づけが足りないからだろう。
ワクワク系では、売りたい商品をお客さんに「買いたい」と思ってもらうための働きかけを行う。それはワクワク系で重視されている「動機づけ活動」の一環だが、思えば今年、この商品にはほとんど何もやっていない。そこで急きょPOPなどでクローズアップしたが、それでも動機づけが足りないだろう。
ワクワク系の商人たるもの、安易にディスカウントはしたくないという思いも強くあったが、ここは割り切り、1個450円のところ、3個で千円という価格設定にし、お値打ち感とポッキリ感を出した力技を入れた上で、あとはワクワク系の動機づけで行く!と決意した。
しかし、ここでもう一歩の妙案が出て来ない。ここにどんな動機づけを加えれば、ワクワク系的売り方になり、起死回生のホームランとなるのか。
そう考えあぐねていた30日の夕方、捜索願を出していたサボテンが突然帰って来た。実は店頭で手をかけ育てていたサボテンが、11月の終わりに忽然と姿を消し、店頭に捜索願のPOPを貼っていたのだが、そのサボテンが見つかり、見つけた方が届けてくれたのである。
これだ!と店主らはひらめいた。
さて、一体何がこれだ!なのか。このサボテンと売れ残った商品がどう関係するのか。果たして店主らは起死回生のホームランが打てるのか。この続きは次回に。
筆者紹介
小阪 裕司 山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。