Home コラム 招客招福の法則 第41回 招客招福の法則

第41回 招客招福の法則

41回 顧客継続率99.8%

筆者:小阪 裕司

私が主宰するワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する、企業とビジネスパーソンの会)の、会員歴15年になる方から、大変嬉しいご報告をいただいた。この方は国際的な大きな保険会社の営業社員だが、昨年、日本一になったというのだ。

日本一になるのは何でも素晴らしいが、彼は9年前にまったく異なる業種から保険営業に転職した者だ。つまり、新天地で早々に大きな成果をあげたことになる。また、同社には9千人の営業社員がいる。そのなかの一番というのも相当すごい。さらに私が嬉しかったのは、他にもワクワク系的な理由がある。それは彼が日本一になったのが、新規客の獲得数ではなく、お客さんの長期継続率だったことだ。つまり、一度客になった方がいかにやめないか、の日本一であり、これがとてもワクワク系的な日本一だと私は思う。その継続率は、実に99・8%。驚異の数字である。

一度お客さんになった方がやめないこと――これは長い目で見れば、企業の存続の根本を支えるものだ。ゆえにワクワク系では「顧客創造活動」と呼ぶものに力を入れ、なかでも顧客との絆作りは、実践会に入会するとまず実践を奨励される、基礎的かつ緊急性の高い活動だ。なぜ緊急性が高いのか。それは、私の見るところ、世の中のほとんどの会社や営業社員らが行っていないものだからだ。その結果、当然のことだが、顧客は流出する。(業界によっては、離脱、失客など様々な呼び方があるが、意味は同じだ)それが、先々で企業の存続や自分の営業成績を危ういものにする。しかしその現在の「厳しい業績」が、過去に絆作りをなおざりにしたツケだとは、多くの企業や営業社員が気づかない。ゆえに悪循環は繰り返されるのである。

また、彼からの報告にはこういうくだりがあった。実践会のある会合で私に言われたことだそうだが、「保険の営業こそワクワク系が必要なんだよね。お客さんはみんな保険難民なんだよ。それを救済しに行ってあげなくてはいけない」。ここで言う「保険難民」とは、自分がどのような保険を買うべきか、どのような保険営業の方とお付き合いすべきかを本当はよく分かっていないお客さんのことだが、それ以降彼は仕事に自信と使命感ができ、営業には「今日も難民救済に行って来ます!」とでかけ、今日に至るという。

営業を「数字作り」ではなく「難民救済」ととらえ、お客さんが知るべきことを教え、必要とあらば商品やサービスを提供し、絆を育む。その結果が業績となるのだし、元来商売の本質とは、そのようなものなのではないだろうか。

筆者紹介
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。