はちゃめちゃなのは選挙に勝つ戦略だけかと思っていたら、わがままな年寄りの老害にしか見えないトランプ大統領。健康保険も、移民法も、ロシアや北朝鮮問題も、頭痛の種には事欠かない日々が続く。
前回はテニスプレイヤーの腕時計についてふれたが、古今東西、老若男女問わず身に着けられるものの最たるものが腕時計と考えられないだろうか。一番一般的な装飾品かもしれない。
皆さんは腕時計をはめているだろうか?私は高校入学の時にきちんとした腕時計を買ってもらい、その腕時計と高校生活3年間を共にした。その後の学生生活にも、子供が出来てからの生活も、腕時計で時間を確かめながら過ごしていたように思う。それがいつからか、腕時計は毎日身に着けるものから、必要な時だけ身に着けるものになった。それは携帯電話が一般的になったこともあるだろう。しかし、昨年末頃から、また腕時計を日々身に着けるようになった。それは、ちょっとしたスピーチを大使館でする事になったのがきっかけだった。腕時計の便利なこと。いちいち携帯電話を出さずにさりげなく時間を確認できる。ずっと腕時計を愛用していた人にしてみれば「そんなの当然」という事になるかもしれない。
携帯電話、特にスマートフォンが一般的になったころ、時計メーカーの未来を心配する声は大きかった。しかし蓋を開ければ、予想に反し高級腕時計の売り上げは伸びていった。1000ドル以上の腕時計の売り上げは伸びたのだが、低価格の時計は売り上げが落ちている。腕時計に対して、時刻を告げるだけのものというより、その機能や性能や装飾品としての価値が再発見されたと言えるかもしれない。
しかし、腕時計メーカーにとってはまだまだ気を許せない状況だ。この1、2年で急激に性能がアップしているスマートウォッチの登場。バッテリーも、1週間程充電なしでも大丈夫なものまで出てきた。しかし、既に携帯電話台頭の波に耐えた時計産業を見つめる目は冷静だ。一番の理由は、客層が違うであろうという見解。そもそもスマートウォッチを身に着けたいと思う人は、恐らく時間を知りたいという動機で身に着けるのではなく、もともと腕時計をしていない人が大半だろうという事らしい。そしてもちろん、高級腕時計の売り上げはスマートウォッチの出現で脅かされるものではないだろう。
高級時計の売り上げはスマートフォンやスマートウォッチの影響はそれ程受けないが、景気の波はそうはいかないらしい。今年初頭に発表された数字では、スイスの高級腕時計の売り上げが昨年中に10%も落ち込んだそうだ。リーマンショック直後の2009年は22%程の下落だったという。香港と中国の売り上げは過去4年間で25%減と言われ、スイスの時計産業には大きな打撃になっている。雇用面で言えば、過去2年間で3000人分の雇用が失われたという。
そうは言っても、高級腕時計の総売り上げは約2ビリオンドルと言われる。高級腕時計の中でも最高値と言われるのがパテック・フィリップ社の約4ミリオンドルの時計。高級腕時計と言うと、ロレックスやオメガなどを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、時計メーカーの頂点と言われるのがパテック・フィリップ。そこに続くのはブレゲやオーデマ・ピゲといったところだろうか。実際は一点ものなどを作る時計メーカーもあるので、一概にどれが一番とは断言し難いのだが、それでもパテック・フィリップが王者といって間違いではないだろう。
年に一度、スイスのバーゼルで時計品評会があるのだが、そこではミリオンドルを超える腕時計など、時計メーカーの英知とプライドを注ぎ込んだ時計が展示される。
誰だったか、「ヨットはレストランには持ち込めないが、時計なら持ち込めるだろ」との明言を吐いた人。やはり庶民には到底分からない世界だ。
(倫子)