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第37回 伝えたいことを的確に伝えるには

伝えたいことを適確に伝えることの大切さは、このコラムで繰り返しお伝えしていることのひとつだが、好例の報告をいただいたので、今号でもお伝えしたい。

ある家具店が、寝具を丸ごと洗えるイベントを催した。よくある「ふとん丸洗いサービス」ではなく、お客さんが自分のふとんやパッド、枕などを持ち寄って、自分で洗うための道具と洗い場を提供するイベントだ。毎年2回開催する同店恒例のイベントで、毎回参加して年中行事にしているお客さんもいるのだという。しかし近年、新規の参加者が増えない悩みがあった。また、常連参加者も自分たちからはなかなか予約してくれず、店から誘いの電話をしてやっと予約が埋まる流れが固定化していた。

そんなある時、あるお客さんに「ふとんの丸洗い、来てみない?」と声をかけたところ、「ハガキは見てるけど、実際に何ができるのか分からない」「(洗い方を) 教えてくれるだけで、あとは家で洗うの?」 との返答。毎回ハガキでイベント案内をしているつもりだったので、この返答に店主らは驚いた。自分たちは毎年行っているので、お客さんが何をするイベントなのか理解できていないとは、思ってもみなかったのだ。

ハガキではどう案内されていたかと言えば、見出しは「寝具丸洗い教室」となっており、開催日と時間が記載されているもの。「洗い場の提供をします。初めての方も大歓迎です」と小さく添え書きはされているが、見直してみると、確かに何をするイベントなのか分からないし、「丸洗い教室」とあるので、「教えてくれるだけで、あとは家で洗うの?」との疑問はもっともだ。

そこでハガキを改良した。見出しは「○○(店名)で、お布団、枕が丸ごと洗えます」とし、同様に大きな文字で「○○(店名)が洗い場を提供します」と書き、丸洗いできるものを列記し、日時と場所を記載した。また今回は、予約方法も分かりやすく改善した。以前は電話番号だけの記載だったが、予約手順をステップで示し、予約日を忘れないようカレンダーに貼っておけるようにした。すると、予約はすぐに埋まり、店からお 誘いの電話をかける必要もなかった。新規顧客も数名増えた。反応のあまりの違いに、店主らは信じられない思いだった。

イベントや商品・ サービスを売る場合、期待した反応が得られないと、イベントや商品・サービスそのものに問題があると思いがちだ。しかしほとんどの場合、真の問題は、伝えたいことが伝わっていない点にある。常にこのことを忘れないことである。

筆者紹介小阪裕司:山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、 その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。