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シアトル市内の生活コスト 10年で62%上昇

ワシントン大学社会福祉学部のダイアナ・ピアース博士により、シアトル市内で4人家族が暮らすには年間7万5,616ドルの生活コストがかかるとの研究結果が報告された。同金額は、幼稚園へ通う子供1人と小学校へ通う子供1人を2人の大人が育てる家庭を想定して、住居費、食費、ヘルスケア、保育費など、生活にかかる基本的な費用を計算した金額だ。同報告は、キング郡の依頼でピアース博士の研究室がワシントン州各郡の生活コストを調査したもの。キング郡についてはシアトル市内とイーストサイド地域とが別に計算され、ベルビュー市やレドモンド市などを含むイーストサイドでの生活コストは州内でも最高の8万3,778ドル(4人家族構成の場合)となった。キング郡の調査による生活コスト計算は、シアトル市では2006年との比較で62%増加、ワシントン州全体としては10年で59%の増加となった。

同調査では、食費は米農務省の最低基準を採用し、外食や旅行などの娯楽は含めず全て自炊をしたと仮定しての試算。交通費は、シアトル市内など7%以上の住民が公共交通機関を使っている地域については公共交通機関の運賃に基づいて計算された。家族構成や地域により違いはあれ、住居と育児にかかる費用が予算の半分以上を占めている。

経済誌などが行う「アメリカの住みたい都市」に毎年ランキング入りするシアトル。一方で、物価上昇の加速は止まらない。

報告書でも、加速する物価上昇で平均賃金が生活コストを下回る状況である結果も明らかにされた。シアトル市内では最低時給15ドルが採用されているが、法律による義務が生じる2021年までの期間は全ての労働者に適用されるわけではない。生活コストが賃金よりも早く上昇しており、特に子どものいる家族の多くは、政府やその他の支援なしで暮らすことは非常に厳しい状況だと報告された。連邦政府が「貧困」としている基準はもはやシアトル周辺では当てはまらず、貧困水準以上の収入を得ている家庭でも、急騰する物価から「困窮」状態に陥る可能性も指摘された。

(小林真依子)

 

編集ライター。金融機関で勤務の後、留学のためシアトルへ。毎日の小さな「オモシロイ」を求めて日々シアトルを探索中。テクノロジーの町にいながらアナログを楽しむ関西人。