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トンネル開通

シアトル・ダウンタウンを南北に1・7マイル貫く州道99号のトンネルが開通した。地元メディアによると、週末に一般開放されると約12万人が足を運んだ。また土曜に行われた8Kランのイベントには2万9千人以上が参加したという。

急速に成長するシアトル地域において、時代の移り変わりを示す象徴的な出来事の1つとなるだろう。1953年に開通し、ウォーターフロントの一景観だった高架道路は先月で閉鎖され、5月まで段階を踏んで取り壊されていくという。

シアトル・タイムズ紙によると、老朽化が進んでいたアラスカンウェイ高架は2001年の地震で受けたダメージに加え、6インチほど沈下していたという。それでも1日平均9万台が走る当地の主要交通路に変わりはなかった。なるべく利用を避けてきた筆者だったが、事情により通行を余儀なくされた際には、何らかの覚悟を決めてアクセルを踏んでいたことを思い出す。

クリスティン・グレゴア前知事の施政で決定された約33億ドルの一大事業は、完成までに10年を要した。それでも本紙で何度か取り上げたことを記憶しているが、このトンネル工事は日本が深くかかわった点でも意義深いプロジェクトだったといえる。

世界最大の直径を誇る日立造船製の泥土圧シールド掘進機「バーサ」が採用されたことでも話題になった。工事途中で作業停止となるトラブルもありながら無事役目を果たした。ライトレールを含め、当地の公共交通改革で数々導入されている日本技術のハイライトの1つにちがいない。

新トンネルは人口増とともに年々頭を悩ませてきた交通問題の特効薬となるだろうか。もしくは改善へ向けた一歩目となってくれるだろうか。今夏までは無料で通過でき、その後は通過料金が発生するという。

一般車向けの開通日となった4日、シアトルは今年初の大雪に見舞われた。地元天気予報によると、今年1番の寒波も襲う。早速難題を突きつけられる形となった当地交通事情だが、まずは新道路の時代の幕開けを祝したい。

(佐々木 志峰)

佐々木志峰
オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。