新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、トンネルの出口が見え始めた年末。改めて振り返れば、人の動きが極めて制限された2020年だった。
日本の観光局が発表する訪日外国人旅行者数の推計値によると、最新の11月は5万6700人。感染症危険情報のレベルが緩和されたことで実数は増加傾向にあるという。5月の1663人を底に4月から8月は1万人以下が続いた。新型コロナウイルスのパンデミックによる渡航制限が出されて以降の数字を見ると、頭で状況を理解できていても愕然とさせられる。
観光事業に力を入れてきたことで着実に数字を伸ばし、訪日数は2018年に初の3000万人超え。昨年は約3188万人だった。五輪開催年として期待された2020年は、昨年比マイナスとなった1月でも約266万人が訪れた。米国からは11万人以上、前年比で13.7%増と快調な滑り出しを見せていた。
2月途中からすべてが停滞。11月までの訪日外国人数は405万人強という。出国日本人数もこの数年伸びを見せ、2019年は2000万人の大台に乗せていた。当然ながら激減の2020年は11月段階で約314万人という。
さて迎える2021年。節目という部分で探ると、岩倉使節団が米国へ向けて出発した1871年から150年となる。使節団の中には留学生も含まれ、この中に第一回海外女子留学生として津田梅子、山川捨松、永井繁子ら若い女性5人が参加した。
オンラインでのアクティビティなど社会はニューノーマルへと進む。それでも日米の橋渡しに寄与してきた、いわゆる草の根の文化交流は実際に人が動くことで育まれてきた。パンデミックを乗り越えすべてが通常通りに戻るのはまだ先だが、その日が来るまで、築かれてきた「橋」をしっかりと支えたいところだ。
五輪、パラリンピック大会の延期も記憶の彼方となってしまった2020年。開催の是非はともかく、150年前と同じく、今後の社会に明かりを灯すことになる1年になってほしい。
(佐々木 志峰)