Home 食・旅・カルチャー 日本舞踊家の藤間蘭黄氏、 ...

日本舞踊家の藤間蘭黄氏、 ワシントン大学で歌舞伎を披露

文:吉田 雛子

4月20日、日本舞踊家で文化庁文化交流使の藤間蘭黄氏が、歌舞伎研究家・翻訳者のマーク大島氏と共に日本舞踊イベントを開催した。ワシントン大学ミーニーホールにて開催された当イベントは、三菱商事レクチャーシリーズとして、在シアトル日本国総領事館も共催し、実現したものだ。
満席になった会場では、『山帰り』と東明流『都鳥』の二つの演目が披露された。『山帰り』は、江戸時代に若い男性の間で流行した大山詣を題材にするもの。色鮮やかな小道具と衣装で登場した蘭黄氏が、大山詣をする火消しを演じた。東明流『都鳥』は、伊勢物語で京から左遷された在原業平が詠んだ「都鳥の歌」をもとに懐古する哀愁の物語だ。蘭黄氏は、シンプルな袴と扇子で「素踊り」を魅せた。

各演目の前には、大島氏の英語による背景解説に合わせて、蘭黄氏がひとつひとつの動きを実演した。蘭黄氏によれば、「日本でも海外でも、歌詞や物語を体現する上で、ひとつひとつの動きを丁寧に、大きく表現することで観客に伝わりやすくなる様に心掛けている」という。本公演では、傀儡師(かいらいし)の一部を、蘭黄氏の舞に、大島氏の英語歌詞による三味線演奏をあわせるという初の試みもあった。伝統芸能を日本国外へ伝えている二人のこの共演に、観客も大いに沸いた。

日本舞踊では、男性が女役を演じることもあれば、その逆もあり、話の途中で演じる性別が変わることもある。幼いころから男役も女役も演じ、それぞれの所作を習ってきた蘭黄氏は、容易に男女の演じ分けができるという。本公演の『山帰り』と『都鳥』でも、男役と女役の入れ替わりを見ることができた。演者が一人という空間で役を演じ分け、観客を物語に引き込む表現力と存在感は圧巻であった。

N.A.P. Staff
北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。