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三菱特別講演、ワシントン大学

文= 松崎 慧

ワシントン大学日本研究学科が3月29日、日本の家具デザインや技術力を紹介する特別講演「TENDO: Crafting wood for 21st century」を開いた。毎年行われる三菱商事特別講演シリーズの一環として、日本を代表する家具メーカー「天童木工」の加藤朋哉氏が講演した。
冬の厳しい寒さを背景に古くから家内伝統工芸が発達し、将棋駒の9割以上を生産する山形県天童市で創立された天童木工。1940年の創業直後は、弾薬箱や木製飛行機などの軍用品も生産、47年に現在の看板技術となる成形合板を日本で初めて取り入れた。薄く切り出した木材をコーティングし、機械で約10分間熱圧するこの技術は、軟らかすぎて加工に向かないとされていたブナ木材の新たな需要を生み出した。
同社は東京文化会館の反響板を手掛けた前川國男、ニューヨーク近代美術館所蔵のバタフライ・チェアを創作した柳宗理のほか、ブラジルやスウェーデンからもデザイナーを登用。デザイナーのアイデアに応えるだけの技術を長年にわたり培い伸ばしてきた。加藤氏も「デザイナーに必要なのは技術への深い理解だけだ」と自身の信条を語った。
近年同社は、加圧して1㍉の薄さに切り出したスギ材を何枚も重ね、さらに加圧し曲線を生み出す圧密成型技術を開発する。第二次世界大戦後の木材輸入自由化で国内シェアが激減した背景を受け、国内杉の有効活用として模索してきた技術は06年、トヨタのレクサスのハンドル部分、さらに16年にはオリンピック・パラリンピックの卓球台にも応用され、高度な技術力と良質さは世界的な評価を受けた。
加藤氏は同社の今後の目標として、現在の技術を受け継ぎ、かつ新技術を開発すること、そして森林資源の持続可能性に貢献することの二点を挙げた。
約一時間にわたる講演の後、質疑応答が行われ、会場からの質問は天童木工の技術者育成や外部のデザイナーとの連携についてまで及んでいた。

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。