新春エッセイ
最近思うこと
文・写真:高橋 進
「84 Yesler」で11月末に開催された「トリュフ・ナイト」に参加する筆者。
同レストランでは定期的にさまざまなイベントを開催する
北米報知愛読者の皆様、明けましておめでとうございます。
最近、人間として後悔しない素晴らしい人生を送るには、ということをよく考えます。それは美しい心と魂を持つこと。自分が幸福だと感じることと同時に、他人の幸福に役立つ人間になること、他人を思いやる心を持つことだと思います。
この年になっても物事に対する執着心をぬぐい払うことはなかなかできません。人生を終える時、あの世には何も持って行くことができません。せめてにっこり笑って自由な心で行きたいなら、物欲にとらわれないこと、握りしめないことが重要です。
今になってこそ、先輩各氏にお世話になってきたおかげで現在の自分があるのだということがしみじみ感じられます。そんな先輩方への恩返しとして、若い人たちが道を開いていくための手助けを続けたい、と思うようになりました。「生きる」とはあなたは何のためなら死ねるのかいうこと。82歳になった今も、まだ答えは出ません。一生懸命、目の前のことにコツコツと向かって毎日を過ごしたいと思います。
私ごとになりますが、この数カ月、ビールのマーケティングに力を入れています。私がオーナーを務めるニューアメリカンレストラン「84 Yesler」で、シェフの顔写真入りラベルのオリジナルクラフト地ビールを、今年のオクトーバーフェストのために作りました。ドイツを代表するメルツェン・スタイルの、伝統的なビールです。シアトルのフィッシャーマンズ・ターミナルにあるビール工場で特別に醸造してもらいました。これを来年は日本に紹介したいと思っています。
そんなこともあり、勉強のために私自身も9月末、フリーモントで行われたオクトーバーフェストに参加。若者を中心に賑わい、私よりも年上の人は見かけませんでした。入場料50ドルを払うと、サンプルグラスで10杯飲めます。私は普段からあまり飲めないたちなので、25ドル5杯のチケットをチョイス。案の定、3杯飲んだところですっかり酔っぱらってしまいました。フェスティバル用に通常よりも濃いアルコール度数のビールがあることを後で知りました。気分が悪くなって車に戻って眠ってしまい、目が覚めるとどこにいるのかわからない。近くの公園に頭を冷やしに行き、シェフに今日は店に出られないので家へ直行で帰ると伝えました。彼女は心配して迎えに行こうかといってくれましたが大丈夫だ
と家に戻りました。家内は何かあったのとびっくりしていましたが、事情を話すと笑っていました。
こんなことをしていると年月があっという間に経ってしまいますが、レストランに出て働くことで私の娘や孫の年齢の人たちと共に過ごす時間が多くなり、自分の年齢を忘れさせてくれます。
最後に見られる景色を楽しみに、あの角この角、あちらの角と、たくさんの角を曲がって来ました。道草の多い人生でした。へこたれず、あきらめず、しつこく生きよと自分に言い聞かせてここまで来ました。私の人生の集大成として開けたこのレストラン、早く、後継者が育つことを願っています。
皆様、健康でよき新年をお迎えください。