By 佐々木 志峰
2022年の国勢調査のデータによると、キング郡に住む18歳以下の若年層の人口が2020年から減少したと、先日シアトル・タイムズ紙が報じた。2014年とほぼ同じ数まで減ったということになる。上昇が止まったのはボーイング不況に見舞われた1970年代以来、この40年で初めてとのことだ。
子どもを持たない、あるいは増やさない選択をする世帯が増えている。要因のひとつには家賃を含めた生活費のコスト増が挙げられている。世代ごとで価値観の違いもあるのかもしれない。最近では、安い生活費を求め米南部へ移住するという家族の話も耳にした。こうした思い切った行動も、一定の場所に留まらない米国ならではのダイナミズムを生み出している。
この数週間で「スノー・バード(snowbird)」という言葉をよく耳にした。寒さに見舞われる自宅を離れ、暖かな地で冬を過ごす人々のことを指すニックネームのようなものだ。フロリダ、テキサスなどに加え、アリゾナも温暖な気候を求める人々の目的地のひとつ。空港で流れてくる荷物にはゴルフバッグが入ったケースが次から次へと出てくる。駐車場にはレンタカーと思われる似た形の車が並ぶ。フリーウェイの隣の車線では、高齢の夫婦らしき2人がゆったりと車を走らせている。
久々のアリゾナは確かに刺激があった。空港周辺のアクセスは良くなり、道路の工事も進む。まだまだ土地はある。人口も増え、この先も開発一辺倒だろう。
だが、まだ自分はスノー・バードではなさそうだ。この季節はこの季節で、当地ならでは良さがあると感じる。
少し離れていれば、ノースウエストの「匂い」が懐かしくなる。空港に辿り着き、自宅へ向かうときの安堵感。珍しく晴れた休みの一日は気持ちよく散歩に出る。アスファルトよりもなるべく土、草の上を選びたい。踏んだ時の柔らかさがこの上なくうれしい。部屋から眺める鉛色の空も見慣れたもの。自然からの恵みで緑色に戻った芝生をゆったりと眺める。
自然のありがたさを再認識できる季節でもある。強風に耐えながら根を大きく張る近所の桜の木に目をやれば、しっかりと花の芽をつけている。自然の息吹を感じられる素晴らしさ。春はすぐそこだ。