アジア・太平洋諸島系(AAPI)へのヘイトクライムで、当地を含む各地で抗議活動が起きている。2月25日にインターナショナル・ディストリクトで発生した日本語教師への障害事件がヘイトクライムとして訴追されていないことも問題視された。被害者は会見で事件当時と法制度の2度にわたり傷つけられたと訴えた。
調査会社イプソスによると、昨年4月に比べて数字は下がったとはいえ、最近1カ月で新型コロナウイルスのパンデミックに対する非難をアジア人に向ける行為を現認した割合は、米国で4人に1人に及ぶ。ただ人種間でヘイトクライムに対する認識の度合に違いがあるという。AAPIの回答者になると、割合は人種間で最も高く46%まで上がる。
春の明るい季節を迎え、ワクチン接種が進む中で人の動きも増えるが、慎重で内向きな生活が続き、文化的な交流が薄まっていることも確かだろう。あらゆる側面から分断された現状から先に進むのは容易ではない。
間もなく開幕を迎える大リーグでもヘイトクライムに対する抗議の動きが見られた。ロサンゼルス・ドジャースでは沖縄出身で日系のデイブ・ロバーツ監督が声明を発表して抗議の姿勢を明らかにし、サンディエゴ・パドレス、ミネソタ・ツインズ、ボストン・レッドソックスなど日本選手が所属するチームも続々と関連声明を発した。21日にはシンシナティ・レッズが公式ツイッターで声明を出し、その直後に秋山翔吾外野手が「ストップ・アジアン・ヘイト」と真剣な表情で訴える動画を続けた。
他チーム同様にシアトル・マリナーズも17日に非難声明を発表した。昨季はスコット・サービス監督がオンライン会見で「Black Lives Matter」、「Vote」といったTシャツを頻繁に着用して、チーム内外にメッセージを発信していたことを思い出した。
直ちに根絶されるべき問題。5月にはAAPIのヘリテージ月間を迎える。暖かく祝いのひと月とするため、それまでに現状が改善するよう願いたい。
(佐々木 志峰)