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平和の願い込めて、灯ろう流し 湖面に浮かぶ市民のメッセージ フロム・ヒロシマ・トゥー・ホープ

毎年当地で行われる平和イベント「From Hiroshima to Hope」が6日、市内グリーンレイク湖畔で行われた。1945年8月6日に広島、9日長崎に原子力爆弾が落とされて71年になる。世代を超えて集まった人々は、平和への祈りを書いた灯ろうを湖に流した。

同イベントは1984年に始まった。当初から20年間イベントの指揮を執ってきたのはナンシー・ディックマンさん。平和機構Social Responsibilityで調査員をしていた当時、原爆に関するスピーカーを交えたイベントを開催、広島、長崎の原爆投下について理解を深めた。

ウィスコンシン州で灯ろう流しをしている団体があることを知り、「シアトルでも灯篭流しをやりたい」と始めたのがきっかけとなる。ディックマンさんは、「これは私の人生でやってきたことの中で最も良いこと。(31年も)続いていることは信じられないですが、私が死んでも続けていってほしい」と涙ながらに話した。

ディックマンさんの引退後、三世のシレィー・シマダさんが引き継いだ。イベント企画者となって11年目となる。親戚は広島で被爆、当日は灯篭に文字を書くブースで参加者の書道の手伝いをしていた。

会場にはユキヨ・カワノさんが制作したアート作品「リトルボーイ」が展示されていた。着物のタンモノシルク、木綿を日本人の髪で織り、71年前に広島に落とされた原子力爆弾をかたどっている。

プログラムではイスラム教牧師がスピーカーとして登壇。ネイティブ系の若者もパフォーマンスを披露した。複合文化的な要素を欠かさないようにし、多くのコミュニティーが一体となって平和について考える時間にしたい意図によるものだという。日系社会からも日系市民協会(JACL)シアトル支部や米国書道研究会シアトル支部などが協力した。

夕暮れを迎えたグリーンレイクには日本語をはじめ、英語やヒンドゥー語で平和への祈りが綴られた灯ろうが浮かんだ。

司会のスタン・シクマさんは、イベント冒頭で「なぜわたしたちは71年たってもこの日に集まり平和を考えるのか。それは原爆の脅威がまだ終わっていないからです。米国を含め世界にはまだ原子力爆弾が存在しているからです」と語る。

現在米国内には5千発近い核兵器が存在している。1996年核実験禁止条約が締結されてから9月で20年目となるが、米国は同条約は批准していない。2009年にはプラハ演説で「核なき世界」を提唱したオバマ米大統領は、5月も広島を訪問、原爆ドームの前で行ったスピーチは記憶に新しい。

オバマ米大統領は4日、核実験全面禁止を求める決議案を国連安全保障理事会に提出する旨を発表した。

7日にはシアトル別院仏教会で原爆死亡者の追悼式が行われた。シアトル広島県人会が後援、広島原爆の被爆者のインタビューや原爆投下から3カ月後の広島の写真などが紹介された。犠牲者への祈りがささげられた後、『千の風になって』が参加者によって合唱された。

広島、長崎の原爆投下を振り返り、平和を祈るのと同時に核兵器が再び利用されないことを願いたい。

(記事・写真 = 大間 千奈美)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。