7月4日、独立記念日の夜。近隣各所で大きな花火が打ち上がる。この辺りでの花火は違法だがお構いなし。お互いに意識しているのか、まるで競い合っているかのよう。連続で打ち上がり、ショー顔負けの締め方。思わず窓から見とれてしまうものもある。
7月5日、7月6日――。祝日は終わったはずだが、打ち残したものがあるのか、夜になると花火の上がる音が耳に響いた。
セキュリティーシステムや近隣状況を共有する携帯用アプリには、一般住民から「発砲があった」との情報が入る。実際の発砲事件を伝えてもらい助かる部分がある一方で、誤報もある。シアトル・シーホークスの試合がある時など、「花火」と「発砲」の誤認も少なくない。日々流れてくる一文をただ読み流すだけになり、危機意識がマヒしていることを再認識することもある。
発砲、乱射、銃撃。シカゴでは独立記念日のパレードが狙われた。フィラデルフィアでも行事の最中に事件が発生したという。許されぬ蛮行が後を絶たない。非営利団体Gun Violence Archiveの資料では、7月6日段階で今年は324件の銃乱射事件が発生しているという。
当地でも問題は顕在化している。
シアトル・タイムズ紙によると、シアトル市内の発砲事件は2020年から21年にかけて437件から612件に増えた。今年の前半6カ月は前年から事件数がさらに増加しているという。シアトル市警によると、5月31日段階で発砲件数は302件。1年前の同時期から75%増えた。死者は15人とほぼ倍増している。
法律による規制や近隣、コミュニティーでの取り組みが求められる。短期間で劇的な変化を求めるのは難しいだろうが、暴力へ突き進むベクトルをどこかで止めなければならない。
原稿をほぼ書き終えたころ、安倍晋三元首相が奈良県で凶弾に倒れ、懸命の救急措置も虚しく亡くなったとのニュースが日本から伝わった。参議院選挙で応援演説中の出来事。犯行に使われた銃は手製だったとされる。
止むことのない蛮行。憤り。それ以外に言葉が思い浮かばない。
(佐々木 志峰)