日々状況が深刻化するウクライナ。8日の段階で国外への避難者数は200万人を超えたという。住民の犠牲者が増す中で、戦場と化す市内に取り残された若い留学生の様子も報じられた。
当地で生活するウクライナ、ロシアの人々も多大な影響を受けているだろう。シアトル市のブルース・ハレル市長は7日、ウクライナや当地コミュニティーの支援を目的とした特別行政令を発した。
シアトル・タイムズ紙によると、ワシントン州におけるウクライナ出身者の人口は2019年で3万1千人を超える。2000年以降で69%増加しており、欧州出身のグループとしては最も大きいという。ウクライナのコミュニティーセンターはシアトル市の南、レントンやタクウィラ近くに位置する。
ロシア出身者も19年に州内人口で1万9千人に達した。2000年以降の伸びは22%増と欧州出身者のグループでも高い。ワシントン州政府のウェブサイトではスペイン語、中国語、韓国語、ベトナム語とともにロシア語の翻訳が用意されている。
アジアの玄関口となる地勢や本紙の特性から焦点が当たりにくいが、東欧出身者のコミュニティー規模は人口統計からも伺える。地元マイノリティーメディア関係者の集まりでは、アジア系が多数を占める中でロシア語メディアの存在と力強さが印象に残った記憶がある。
当地を通じた東欧と日本のつながりとしては、ロシア革命の内戦でシベリア東部に孤立したポーランド難民を救出した人道支援がある。日本側で受け入れた難民孤児たちはシアトルに渡り、そこから欧州に向かう東回りの大行程でポーランドへたどり着いた。ポーランドが1918年に独立を回復して100周年が近づく過程で、当地に残る歴史が改めて掘り起こされた。
今週で東日本大震災から11年が経つ。コミュニティーの枠を超えた被災地支援活動で新たなつながりも生まれた。胸の痛む日々だが、小さな人道支援は遠い力でもできる。悲劇が繰り返されないよう各国、各コミュニティーの絆も深まるよう願っている。
(佐々木 志峰)