インターナショナル・ディストリクト(ID)駅前に建設が予定されている複合ビルのデザイン概要が、5月8日のIDスペシャル・レビュー・ディストリクト(ISRD)住民説明会で発表された。同ビルを建設するのは、宇和島屋前会長のトミオ・モリグチ氏が代表を務める開発会社、フジマツ・ビルディングLLC。複合ビルには、住居、ホテル、店舗スペースが入る予定だ。
建設予定地はS. Jackson St.とS. Main St.間の1/2ブロックで、現在駐車場になっている区画。設計は、数々の受賞歴を持つ日本の建築家、坂 茂(ばんしげる)氏で、シアトルの建築設計事務所、フライハイト・アーキテクチャーのアーサー・チャン氏も協力する。坂氏はコロラド州のアスペン美術館、日本の大分県立美術館を手掛けたことで知られる。世界各地の災害被災地で、紙筒を利用した仮設住宅を造る支援活動を行ってきたことが評価され、2014年には「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー賞を受賞している。坂氏が過去にプロジェクトに携わったカナダ・バンクーバーの不動産投資開発会社、ポート・リビングも計画に参加予定。同ビルの建設は、シアトル市が2017年にインターナショナル・ディストリクト内の高さ制限を緩和した後の基準で計画され、ビルの高さは200フィートを少し超える見込み。
住民説明会では、フライハイト・アーキテクチャーからデザイン概要が説明された後、住民からのコメント、そしてISRDボード・メンバーと開発チームとの質疑応答という流れで進められた。発表された新ビルは、地上階部分の中庭に一般通行人や近隣住民がアクセスできるオープン・スペースを設けている。ボード・メンバーからの質疑応答でも、オープン・スペースについての聞き取りが中心となった。
住民からは、「インターナショナル・ディストリクトの経済発展につながる。商業スペースにどのような店が入るか楽しみだ(周辺ビル所有者)」というような好意的な意見と、「現在のインターナショナル・ディストリクト住民も手が届くような低所得者向け住宅(アフォーダブル・ハウジング)を50%は確保して欲しい(アジア系市民団体関係者)」、「高いビルで眺めが遮られないか心配だ(近隣住民)」などの懸念を示す意見が交わされた。
ISRDの審査を経て、シアトル市からの許可が下りた後に建設開始予定。完成はインターナショナル・ディストリクトからイーストサイド方面へのリンク・ライト・レールが完成する、2023年頃になる見込みだ。
(山川 彩、室橋美佐)