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命、人種、法、正義 高まる市民の抗議の声

ルイジアナ州バトンルージュで5日、黒人男性アルトン・スターリング氏が白人警察官2人に取り押さえられて射殺された。その翌日、ミネソタ州セントポールでも同様に警察官が黒人男性フィランド・カスティロ氏を射殺する事件が起きた。事件当時、殺害された両氏ともに犯罪行為はなく、その様子を記録した映像は、ソーシャルメディアなどで拡散。全米で大規模な黒人差別反対運動が行われている。

デモンストレーションでは、「BlackLivesMatter(黒人の命も大切だ)」の掛け声と文字が目に付く。同文句は構造的差別を喚起するために2014年から言われ始め、今日に至る。

ウエストレイクセンターからキャピトルヒルにかけて21日、大規模な#BlackLivesMatterデモが午後6時から11時にかけて行われた。

数百人からなる参加者の大多数は白人で、小学生ほどの参加者もいた。一同はウエストレイクパークに集合後、パイクストリートと6番アベニュー交差点を封鎖して円を作り、黒人差別に反対する意を表した。

その後、「NoJusticeNoPeace(正義がなければ平和もない)」といった掛け声を挙げながらキャピトルヒルまで行進。シアトル警察は終始、車とデモ隊の衝突などを避けるための措置をとっていた。

英紙「ガーディアン」が昨年から始めているTheCounted調査によると、2016年7月25日現在、年内に米国内で黒人が警察官に射殺された数は148人。内25人はナイフを含む一切の武器を持っていなかった。同様に射殺された白人の数は約2倍の298人。内無武装は同じく1割程の45人だった。

人種による目立った差はないが、問題になるのは射殺した警察の責任処分だ。昨年、警察官によって射殺された市民の数は1146人に上る。だが、射殺した警察官が、職務中に殺意なくして不法に人を殺害した罪で問われる「故殺責任」を問われたケースはない。

過去数十年において有罪判決を受けた警察官は数十人で、うち一人が中国系米国人のペーター・リャング氏。14年11月20日、恋人のもとを訪ねに来た無武装の黒人男性アカイ・ガーリー氏を射殺した罪で15年の禁固刑が下った。

リャング氏はニューヨークで初めて殺害の罪を問われた警察官となった。判決を待つ裁判所の前では、「警察内部にも中国系米国人に対する差別があるのではないか」と主張するアクティビストと、「BlackLivesMatter」を掲げる中国系活動家の間でコミュニティーが二分する様子も見られたようだ。

「Whoeslivesmatter?」の答えは「AllLivesMatter」だという主張は、大統領選挙のディベートでも何度となく持ち上がる。21日のデモでも1人の黒人女性が「大切なのは黒人の命だけではない」と訴える姿も見られた。

しかし法制度を見てみると人種差別の問題は浮き彫りになってくる。全米マイノリティー推進協会によると、アフリカ系米国人の検挙率は白人の6倍。黒人差別反対の声が今も訴えられている背景には、住居から収入、教育、法制度に至る様々な側面において、構造的な差別が社会に存在していることの表れといえるかもしれない。

(記事・写真=大間 千奈美)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。