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明るい9月へ〜一石

By 佐々木 志峰

出張帰りの飛行機。着陸の振動で目が覚めると、そこには期待と裏腹に、鉛色の空が広がっていた。この時期のシアトルではなかなかない雨模様。カリフォルニア州への「ハリケーン」襲来、ハワイ・マウイ島の山火事の大惨事、そして日本の猛暑。異常といえる8月だった。

異常が通常となってしまったことも。シアトルの隣町を訪れてみると、メインストリートにホームレスのテントが並ぶ。地元ニュースによると、その後コミュニティーの協力を経て撤去されたそうだが、こうした光景は残念ながら見慣れたものとなって久しい。

ある夕刻にシアトル市内のインターナショナル・ディストリクトを車で走らせた。まだ陽が長く、午後9時を過ぎても明るい。営業中の店舗には若者の出入りが多く、盛況ぶりが感じられる。公園には外で涼む高齢者の姿が多数あった。路上は駐車車両で一杯。だが少し離れると、驚くほどのホームレスが目に入る。若者たちが停める立派な車と、その脇に佇む彼らのギャップに心が重くなった。

そんな異常を経た9月に明るい話題をもたらしてくれているのが、野球のシアトル・マリナーズ。8月の大躍進で一気にア・リーグ地区優勝争いに加わった。2年連続となるプレーオフ出場が視野に入り、地区優勝となれば球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏や、佐々木主浩氏を擁した2001年以来となる。

同月11日からは当地で大谷翔平選手の所属するロサンゼルス・エンゼルスと3試合を予定。右肘の故障は残念極まりないが、ア・リーグで首位を走る本塁打を含め、打者としてのタイトル獲得がなるか注目される。

8月の女子サッカーW杯で日本代表なでしこの活躍もあったが、男子は世界的スターのアルゼンチン代表リオネル・メッシ選手のМLS移籍で米国リーグに話題が集まる。日本代表の主将として長年活躍した吉田麻也選手もロサンゼルス・ギャラクシーへ入団。地元シアトル・サウンダーズFCとの試合は、今季は敵地のみの試合が残るだけだが、契約は1年半。相手チームではあるものの、来季に予想されるシアトルでの躍動も期待したい。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。