By 佐々木 志峰
ドル円の為替から相変わらず目が離せない。円安進行は止まらず、7月1日の段階で1ドルは161円台に達した。日本からアメリカ出張に来る同業者がいるが、数年前と比べると、経費も恐ろしいほど跳ね上がっているだろう。
一方、訪日者にとってはありがたいことこの上ない。物価が上がっても、円安を問題なく享受できているに違いない。日本政府観光局の資料によると、訪日外客数は今年3月から3カ月連続で、1カ月あたり300万人を突破した。最も新しい統計となる5月は304万人強で、昨年同月から60・1%増。最も多かった2019年を9・6%も上回った。
米国からの訪日者数は5月で昨年を35%近く上回る24万7千人。今年の総計は早くも100万人を超え、現時点で昨年から4割強伸びている。在米者から見れば、逃すことのできない訪日の大チャンスが続いているといえる。
当地にも旅行シーズンが到来した。澄み渡る青空。日差しが強くても、高々とそびえる木々の陰を歩けば心地よい。初夏の当地を訪れた同業者からは、「シアトルの夏はこんなにいいんですか。最高じゃないですか」との言葉をもらった。
シータック空港のゲートを通過する人数は夏シーズンで1550万人を見込み、昨年よりも2、3%増となる。年間で見れば2019年の記録を更新する勢いになるそうだ。シアトル・タイムズ紙が掲載したシアトル観光局、ビジット・シアトルの統計によると、当地への訪問者数は昨年で3780万人におよび、この4年で90%増。消費額は82億ドルという。野球のMLBオールスター戦などの大行事はないとはいえ、今年も同様に盛況となるはずだ。
そんな時期に入ったころ、所用でシアトル市内のジャクソン・ストリートを久しぶりに車で走ることがあった。シアトルの明と暗をはっきりと見て取れたのが、パイオニア・スクエアからインターナショナル・ディストリクトを抜け、リトル・サイゴンへ向かう10ブロック。レンガ造りで洗練された雰囲気とは裏腹に、歩道にはホームレス。旅行者はおそらく目にしないであろう、当地が持つ現実の一つだった。