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参議院選挙、シアトルで在外投票 低迷の投票率、問われる政治参加

日本で第24回参院選の投開票が10日に行われた。当地では6月23日から7月2日までの10日間、在シアトル日本国領事館で第12回目となる在外投票が行われた。

結果は自民・公明の与党が合わせて70議席を確保、非改選を含めると146議席で総議席の6割を占めることになる。自民党の安倍晋三首相は前選挙で掲げた経済政策「アベノミクス」に対する国民の評価を得たとの認識を示した。民進、共産、社民、生活の野党勢力は一人区で統一候補を立て健闘したが、野党全体としては51議席にとどまった。

公職選挙法改正で満18歳以上に選挙権が与えられてから初の国政選挙。10代の新たな有権者は240万人に上ったというが、投票率を見ると45・45%で、全体の54・70%より10%近く低い結果となった。

海外にいると投票へのハードルはさらに高くなる。総務省の発表によると、在外選挙登録者による投票率は、比例代表で22・45%、選挙区選挙で22・21%だった。在外選挙人名簿への未登録者も多く、在留邦人全体としての投票率はさらに低くなる。

在シアトル日本国総領事館で選挙を済ませた有権者の中からは、「知人で選挙に行く人はなかなか聞かない」という声が多かった。期間内に投票をした有権者は、インターネット上のニュース記事や新聞、ソーシャルメディアなどで日本の選挙活動を見たり、公約を読み比べてから候補者を選んでいた。

候補を選んだ基準を聞くと、福祉、経済、原発を巡るエネルギー政策などが挙げられた。中でも日本同様、憲法改正への賛否については、「自分の国は自分で守るべき」「防衛上必要となれば変えるべき」という改憲に肯定的な意見もあれば、「戦争がしやすくなるように改憲されてはならない」「現政権下での改憲には反対」といった意見も聞かれた。

今回の選挙では、改憲に前向きとされる自民党、おおさか維新の会、日本の心を大切にする党と、加憲を掲げる公明党が総じて165議席を取り、衆参合わせ改憲に必要な三分の二以上の議席を確保した。安倍首相は11日、党本部の記者会見で自民党の案をベースにしながら改憲必要議席を目指す意向を示した。改憲勢力といっても党によって案にばらつきがあり、野党も改憲に関して賛否は分かれる。今後与党から具体的な草案が出ることが見込まれるが、与野党踏まえた慎重な議論を期待したい。

6月23日には、英国で欧州連合離脱の是非を問う国民投票が行われた。投票率は約72%で離脱派が残留派を上回り、選挙の結果を踏まえて新たに就任したテリーザ・メイ新首相は離脱推奨を確約している。

日本においても改憲の際には国民投票が行われる。憲法は国自体の在り方を左右し、様々な政策の中には日米関係を含めたあらゆる外交に関わってくるものもある。在外投票が日本国外にいても政治に関わる手段の1つとして認識されてほしい。

(記事・写真=大間 千奈美)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。