ミネタ・レガシー・プロジェクトが、スタンフォード大学が運営する国際理解教育プログラムの International and Cross-Cultural Educationの協力で、9月10日にオンラインの教育カリキュラムをリリースした。『What Does It Mean To Be An American? (アメリカ市民であるという意味は?) 』と題する同カリキュラムは、高校生や大学生を対象に、アメリカ市民であるとはどういうことかを伝える内容で、利用は無料だ。
ミネタ・レガシー・プロジェクトは、アジア系としてハワイを除く米本土では初めて米下院議員となり、民主党ビル・クリントン政権で商務長官、共和党ジョージ・W・ブッシュ政権で運輸長官を務めたノーマン・ミネタ氏の経験と功績を伝えるプロジェクト。2018年にドキュメンタリー映像作品『Norman Mineta and His Legacy:An American Story』をリリースし、その後も同作品の放映会や講演会などの活動を続けている。昨年11月には、本紙関連団体の北米報知財団も、ミネタ・レガシー・プロジェクトの協力で、ミネタ氏を招いての同作品放映会をワシントン大学で開催した。
同カリキュラムは、ミネタ氏の人生とキャリアに沿って、移民、市民の自由と公平性、市民参加、正義と和解、リーダーシップ、そして日米関係という6つのテーマに別けたセクションから構成される。ミネタ・レガシー・プロジェクトが動き始めた5年前には、こうしたテーマへの取り組みが、現在のアメリカで当時以上に重要になっているとは想像もされなかったことだ。高校や大学の授業で使うことを想定して作られており、リモート学習にも対応している。 全カリキュラムを通して、300点以上の写真やイラスト、23点の映像を閲覧できる。
最初のテーマである移民のセクションでは、ミネタ氏が自分の家族の移民体験について話しをする動画を観て、現在の学生が語る家族の経験についてのストーリーと比較することができる。市民の自由と公正のセクションでは、日系アメリカ人の強制収容がケーススタディとして取り上げられ、イスラム教徒のアメリカ人学生や黒人大学生へのインタビューなども含まれている。市民参加、リーダーシップのセクションでは、ブッシュ元大統領とクリントン元大統領が登場する。正義と和解のセクションでは、99歳の日系2世の女性が、強制収容された際に感じた憤りについて率直に語り、その後の政府による謝罪で強制収容の全容が理解できたと語る映像が観られる。最後のセクションの日米関係では、元駐日大使のジョン・ルース氏が、在職中の経験を共有している。ユダヤ系アメリカ人の高校生も登場し、日本についてもっと学ぶためにプログラムに参加した理由などを語っている。カリキュラム開発者は、多くの教師に学校の授業でこのカリキュラムを活用して欲しいと伝える。
(文=デイビッド・ヤマグチ、訳=谷川晴菜)