シアトル市は昨年11月、街づくりのプロジェクト「Your Voice, Your Choice」を通し、交通安全対策の必要な場所として一般市民より応募のあった600以上の候補地から、22カ所の工事を決定した。ワシントン州日本文化会館(JCCCW)正面のS. Weller St.もそのひとつに選ばれ、市から出る3万ドルの補助金を対策費用として充てることが発表された。
このプロジェクトは、道路や公園の修繕に充てる200万ドルの市の予算の使い道を、市民の投票により決定するもので、市のホームページでスペイン語や中国語など複数の言語により、昨年1月下旬に候補地の募集が始まった。同5月に市内の区画ごとに候補地を絞る公開の会議が行われた後、同9月に11歳以上の6,500人を超える市民によるオンライン投票で最終決定された。
JCCCWは、交通量の急増や路上駐車が多いことで見通しが悪くなっていたS. Weller St.での交通事故防止の対策として、同プロジェクトに応募。106票を獲得し、当選した。JCCCWではシアトル日本語学校を運営しており、子どもだけでなくボランティアに訪れる高齢者もいて、「道を渡るのは危ない」と利用者から声が上がっていた。日本語学校の校長自ら横断旗を持ち、安全に道路を渡れるように手助けをしてきた中での朗報。職員の中村有理沙さんは「選ばれてうれしい。票が集まるかは、実際にやってみるまでわからないところがありました。近隣の道路を利用する多くの方々が行動を起こしてくれたおかげで当選し、修繕工事決定に至りました」と、喜びを語る。近所には教会や幼稚園、高齢者向け施設もあり、歩行者が多いことからたくさんの票を獲得した。
住民によるオンライン投票で市の予算を使った道路修繕工事の内容を決めていくという、ユニークな同プロジェクトは、シアトル市で2015年から採用されている。優先度の高さを選んで投票できる仕組みになっており、注目度の高い候補地が市のホームページでひと目でわかる。中村さんも「リアルタイムで進捗状況が見え、行政の反応が速いと感じました。自分たちの暮らす地域の問題だけではなく、他の地域の人が抱える問題も知ることができ、決定に至るまでのプロセスにも意味があると思いました」と話す。
補助金は、同通りの環状交差点で車のスピードを緩めさせるためのトラフィックサークルの拡大、周辺の駐車制限などの対策に利用される。