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特別インタビュー  「季節の茶花展」開催の川崎君代さん

ベルビューのボタニカルガーデンで「季節の茶花展」が9月10日に開催される。東茶古典セミナー佐世保支局で2000年から茶花の美しさの普及と教育にたずさわっている川崎君代さんと、その生徒たちが、かねてから念願であった日本国外での茶花展を実現させる。日本の文化、禅に代表される「素朴な中にもある心の豊かさ」を表現する茶花展について、川崎さんに話を聞いた。

(インタビュー:森井美礼 記事:天海幹子)

取材者:なぜシアトルで茶花展を開催しようと思われたのでしょう。

川崎さん:長年、海外で茶花展を開催してみたいという夢を持ち続けておりましたが、どこの都市も魅力的に感じる一方、自分が訪れたことがない場所で開催する難しさに足踏みをしていました。昨年、偶然にも息子が仕事でシアトルを訪れる機会があり、シアトルが私の住む佐世保と似た雰囲気を持つ町であり、海や街並みがとても美しいところであると教えてくれました。

どうしても一度自分の目で見てみたいという思いに駆られて、早速、今年の3月にシアトルを訪れましたところ、町の美しさはもとより、お会いした方々の温かい人柄に触れることができました。ここが私の求めていた場所だと感じ、迷うことなくシアトルで茶花展を開催しようと決めました。

取材者:茶花と自らの出会い、今までの経緯をお話しください。

川崎さん:実家がお茶や茶道具の販売を手掛ける店であったことから、小さいころから茶道に触れてきました。そのため、身近に茶花を教えてくださる方がいらっしゃって、導かれるように茶花に親しむようになりました。自分で茶花を教えるようになってから毎年開催しております教室の発表会では、300名ほどのお客様に来場いただき、普段茶花に触れることのない方々の忌憚ないご意見を賜れる貴重な場所になっています。

数年に一度は大規模な会を催すことができるようになり、2003年5月には皇族のお一人であった三笠宮寛仁親王殿下のご臨席も賜ることができましたのは、本当に得難い経験であったと思っています。

取材者:茶道を知らない一般の人のために、なぜお茶を飲む時に茶花が必要となるのか教えてください。

川崎さん:茶花とは、季節折々の植物の魅力を最大限に引き出すことにより、季節の移り変わりを誰にでも身近に伝える方法の一つだと考えています。お茶を楽しむ場に茶花があることで、「室内にありながら山野の季節の移ろいを感じる」ことが大事なのだと思います。

取材者:茶花道の基本のさし方などはあるのでしょうか?

川崎さん:私が個人的に考えている茶花の特徴は、目の前の花が如何に自然のまま・素直に・自由にあるように見えるか、ということに主眼を置くと考えています。季節感を表現するために、季節に合わせた花入れの選び方や、花を自然でかつ美しく見せるために先人が編み出してきた決まりなど、最低限のルールは決められています。

例えば花入れですと、夏はかごを多用し、冬は土物の陶器を使ってそれぞれの季節を表現します。そのような知識を前提としながら、自分が目の前の花をどのように感じるか、ということがもっとも重要なのです。

取材者:展示を見に来た人たちに、心のお土産として何を 持ち帰ってもらいたいですか。

川崎さん:身近にある雑草として忘れ去られているような季節の移ろいを表す花々の一つ一つが持つ魅力に、少しでも気づいていただければ、と思っています。そして例えば子供たちが道端で積んできた花をご家庭にある器で自然にあるように生けてみる、そういう茶花の精神を感じていただく機会を持っていただけるのであれば、望外の喜びです。当日はおいでになったお子さんと一緒に茶花を生けてみたいと考えております。是非、ご家族連れでご参加ください。

 

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。