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ハレル暫定市長

日系政治家のブルース・ハレル市議が短期間ながら第54代シアトル市長に就任した。選挙による「正式」な形ではなく、エド・マレー市長が辞任するという政変を受けてのもの。市議会議長を務める立場から、13日に暫定就任、そして15日には11月末までの任期を務めることを辞退した。18日にティム・バージェス市議が市議会の承認を受けて新市長に就任した。
マレー前市長の辞職というシアトル市政を襲った衝撃。30年以上前の性的スキャンダルが原因で、今年予定されていた再選も自身へのイメージ低下で辞退、残り任期を2カ月あまりとしたところだった。1週間で市長が3人、約70日後には新市長が誕生するという異常事態だ。
市政の混乱を受けて、ハレル市議会議長が即日で暫定市長に就任した。市長就任の是非を判断する暫定期間という数日のみだったが、二世の母親を持つ日系市議による「初の日系市長」が誕生した瞬間だった。
ハレル市議は予備選で敗れたが、2013年の市長選に出馬したこともある。今回は15年に3選を果たし、4年任期の2年目というタイミング。2カ月ほどの市長職を担うために市議を辞さねばならず、「リスク」を取る可能性は低かった。また今期は議長職を担っている。前回選挙は小差で薄氷を踏む思いだっただけに、今回の任期は厳しい目で成果を問われている。数日間の市長就任期間では、アマゾン社の第二本社に関してなど、「市民を第一に考えた」4つの特別令を発した。
ハレル暫定市長の辞退発表を受け、第55代市長となったのはバージェス市議。今年限りで引退が決まっており、市政における立場、タイミングとしてはもっともな人選となった。新市長選は11月7日にジェニー・ダーカン、キャリー・ムーン両候補が争う。
大混戦となった今年の市長予備選ではボブ・ハセガワ州上議も出馬し健闘を見せた。去年、一時空位となった市議席にはジョン・オカモト氏が就任、また8月にはマレー前市長政権での新主席補佐官としてフレッド・キガ氏が招聘された。ハレル暫定市長の就任でシアトルにおける日系の政治プレゼンスの高さを改めて示した形だ。
(佐々木 志峰)