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コロナ禍のアメリカで聞いた 外国人留学生・現地大学生の声

多くの民族コミュニティーが共存するシアトル。だからこそ日本人だけではなく他国籍の留学生や現地の大学生が、このコロナ禍でどのように感じているのか理解しておきたいところ。自宅待機を求められ、オンライン授業が始まって約2カ月が経ち、彼らが今感じることとは? 現役留学生である本誌記者インターンが生の声をレポートします。

*同記事は、姉妹紙『ソイソース』6月12日号からの転載です。

取材・文:中山 栞
写真:加藤良子

インタビューに答えてくれた学生たち

名前 出身地 大学在籍年数 大学名 性別
Sally 中国 2年 ワシントン大学(留学中)
L.P アメリカ 4年 ワシントン大学(編入)
C.W サイパン島 3クオーター シアトル・セントラル・カレッジ(留学中)
AC 中国 1年 シアトル・セントラル・カレッジ(留学中)

 

●新型コロナの影響であなたの生活はどう変わりましたか?

Sally:オンライン授業が始まりました。友人と出かけられないのが辛い。以前の生活のペースに戻したいけれど難しい。

L.P:カフェなどに行けなくなったことかな。お金の節約にはなっても全く行けないとなると精神的にきつい。学校に通わず、友人に会うこともないので、オンライン授業だけではストレスがたまって課題に行き詰まることも。今は運動したり、解決策を自分の中で見出すようにしたり、いろいろ試しているところです。でも、経済的に困っているわけではないので、自分は恵まれていると思います。

●何か困っていることはありますか?

Sally:感染予防については、全てのことにおいて気を付けるようにしています。時々、国籍のこともあり、地元の人々とどのようにコミュニケーションを図ればいいのかわからなくなり、困ることがあります。

L.P:症状が重症化する場合もあるため、感染しないか心配。まだ決定ではないけれど8月に向けてウエディング・パーティーを準備しているので、先が見えない中で延期を含めどうするか、いろいろ考えさせられます。

C.W:シアトル・セントラル・カレッジからワシントン大学に編入予定です。だけど、この状況下できちんとできるか心配です。

●コロナ禍を経験したことで気持ちの変化、気付きなどがあれば教えてください。

Sally:自分のことは自分で守らないといけない。コロナ禍を通して、自分に厳しくしようという意識が高まったように思います。

L.P:正直、このような状況下で規則正しい生活を送れていることが驚き。最初はストレスをため込み過ぎることを心配していたけれど、なんとかうまくいっています。辛抱強く待つことを学んだかな。

AC:ウイルスのことになると、きちんと予防・対策するよりもむしろ、SNSの情報を信じ込んでいる人が多いことに気付かされました。

アンケートを通して感じた、お互いを思いやる大切さ

同じ中国からの留学生男女2人では、それぞれ新型コロナに対する見方が違うようだ。ただ、やはり意識は高い。特に女性の言葉の端々に、コロナ禍によって生じた「生きづらさ」や「責任感」を感じずにはいられなかった。同じアジア人として、私たちも差別の対象になることがあるからこそ、お互いの気持ちを共有し、一緒に乗り越えていきたい。また、アメリカ出身の現地大学生の意見からは、このような時だからこそ、ストレスとの向き合い方が大切だと感じた。ストレス解消法を自身で見出し、気持ちをコントロールすることが相手への思いやりにつながり、社会全体で恐怖や過度なストレスが緩和されることでアジア系コミュニティーに対する差別が減るのではないか。

徐々にロックダウンの緩和を行う中でも感染はあとを絶たず、高い失業率が続くアメリカ。アジア人差別が多発し、ここシアトルでも複数の事件が報告されている。国籍や文化が違う分、お互いを完全に理解することはできないかもしれない。しかし、相手の立場に立ち、思いを共有することはできる。これからのアメリカは、ひとりひとりの行動によって大きく変わる。だからこそ、お互いを尊重し、思いやりを持って行動していかなければならないと改めて思った。