月曜日、オンラインで仕事を始めた矢先、画面を通して声明が流れてきた。ウィスコンシン州で背中からアフリカ系米国人男性が警官に背中から銃撃されたことに関するものだった。当地でもその夜、抗議活動が行われ、破壊行為などの暴動にまで及んだと報じられた。
翌日、同様にリモートで仕事を始めると、画面の向こう側で関係者が「Black Lives Matter」と白字で書かれた黒いTシャツを着ていた。この関係者はメッセージの入ったTシャツを毎日来て現れる。日にちやタイミングに合わせて前述の「Black Lives Matter」に加え、「Register. Show up. Vote」、「Vote!」など。オンラインで購入したものもあり、今後11月の大統領選挙までこの活動を続けていく予定という。
5月にミネソタ州で起きた故ジョージ・フロイドさんの事件後に呼びかけられた声が頭に浮かんだ。社会に変化を起こすため、暴力ではなく、「投票しよう」――。市民の意識は少なからず数字にも表れている。
8月4日に実施されたワシントン州の予備選挙。地元日系議員ではシャロン・富子・サントス州下院議員、ボブ・ハセガワ州上院議員が再選へ臨んでいる。両議員とも予備選を問題なく通過、得票率から再戦は盤石といえる。ジェイ・インスリー州知事も5割強の得票で本選挙へ進んだ。
このワシントン州の予備選は従来、本選挙に比べて投票率が伸びない。例えば大統領選や中間選挙のない昨年は約397万人が選挙登録し、投票率は29・56パーセントに過ぎなかった。大統領選挙の年は知事選が行われており、2016年は約410万人が登録して投票率は34・88パーセント。2012年は約373万人が登録して投票率は38・48パーセントだった。
わずかな変化は2018年の中間選挙に表れ、約430万人が登録して投票率40・79パーセントと数字を伸ばした。今年は約461万人が有権者登録し、投票率は54・44パーセント。昨年は「谷間」の1年だったとはいえ、選挙の意識はこの数年で大きく高まっている。
11月の本選挙まで2カ月あまり。まだしばらくは毎日のように目にするTシャツのメッセージはどのように変わり、社会はどのように動いていくだろうか。
(佐々木 志峰)