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変遷〜一石

By 佐々木 志峰

仕事現場で聞き慣れない音がした。目を向けると、上空を映像撮影用のドローンが飛んでいた。この技術が、近年は兵器としても使われているという事実が頭をよぎる。そして怒りと悲しみの連鎖も。今度は中東。当地をはじめ、米各地で起こる平和を訴えるデモ。今は犠牲をこうむる一般住民へ可能な限りの人道支援を願うばかりだ。

中東の騒動で原油などの資源価格にも目が向く。ロシアのウクライナ侵攻あたりから加速してきた物価高に合わせ、ガソリンの価格も相変わらず高い。1年前と比較すると落ち着いたようだが、この夏もそのあまりの値段に驚かされた。カリフォルニア在住の同業者に聞けば、1ガロン7ドルを超えたところもあったという。

先月あった出張先の米中西部では、ガソリン価格は1ガロン3ドル半ほどだったが、シアトルに戻って最初に目に入ったものは1ガロン5ドルを超えていたと記憶している。別件で訪れたテキサス州でもらったレシートを見ると、1ガロン3ドル5セントほど。全米自動車協会(AAA)の地図で見ると、米西部の高価格が際立つ。

思い返せば、今世紀初めころは1ガロン1ドルほどだった気がする。それ以前は、さらに安価だった時代もあったのだ。本紙編集部にいたころに一気に3ドル超えとなった記憶が鮮明によみがえる。
街中を走る車は電気自動車(EV)を頻繁に見るし、ライドシェアでEVに乗る機会は増えてきた。レンタカーはハイブリッド車だけでなく、EVの選択肢も少なくない。

シアトル・タイムズ紙によると、シアトル地域では14%の世帯でEV、もしくはハイブリッド車をこの1年で所有、もしくはリース契約していたという。EVとハイブリッド車の割合では、まだ後者が多くを占める。前者を所有する85%は、まだほかの車が手元にあるという。それでも調査では今後1年で約6%の世帯がこれに加わる予定で、そうなればEV、ハイブリッド車利用が当地全世帯の2割に及ぶ。

紛れもない移行期。そして、その技術よりはるかに重苦しい人間社会の複雑な変遷がある。前号で触れた憎悪犯罪も報じられている。考えさせられるばかりだ。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。