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日本の存在

大雪を終えてもまだまだ冬の感を抜けないシアトルを尻目に、仕事の関係でアリゾナに移動した。広い空、乾燥した空気と、最初の数日は早速カルチャーショックを受けた。だが、さぞ暖かいのかと思えば、太陽の光がなければ肌寒い朝夕が続いている。雨も降る。さすがに2月半ば。まだ春到来とはいえないようだ。

大リーグの春キャンプが始まり、シアトル・マリナーズでも新加入の菊池雄星選手が投手としていち早く練習を始め、16日からは大リーグ復帰を目指すイチロー選手も合流した。メディア関係者の賑わいもあり、日本でのシアトル露出はアリゾナに限って言えば高まりを見せているようだ。

日本選手が大リーグ各チームでプレーするようになり、「日本」が明確に存在するようになって久しい。現場にいれば「日本」というものを至るところで感じることができる。

ロサンゼルス・ドジャースのメディア関係者の口からは、たどたどしく日本語が発せられる。デイブ・ロバーツ監督は日系人。サンディエゴ・パドレスの広報の1人は、覚えたての簡単な日本語を使って迎えてくれた。アリゾナ・ダイヤモンドバックスでしのぎを削る若手の中には、ブラジル出身の日系選手ボー・タカハシ投手がいる。片言の日本語を耳にするたび親近感がわく。

そして日本の開幕戦を控え準備を進めるマリナーズは、今年のスローガンに日本発の概念といえる「改善」を掲げた。クラブハウス内には大きく日本語で書かれたパネルが貼られ、チーム関係者用にTシャツも作られた。着用している選手も散見される。

日本での開幕戦や日本選手が所属している関係もある。またチームを解体し、再建へ向けて歩む中で日々何か良くしていこうとの考えを持ち込んだそうだ。

菊池選手もスペイン語と日本語を交換で教えあっていると話していた。選手の活躍のみならず、言葉や考え、道具、技術といった部分でも文化、国の橋渡しが行われている。この大リーグという舞台が果たす役割も大きいと改めて実感した。

(佐々木 志峰)

佐々木志峰
オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。