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書は「生きる道」米国書道研究会に息づく書のこころ

米国書道研究会は、1965年にシアトル日蓮仏教会第七世開教師として赴任した故生田観周師により発会し、現在はロサンジェルスに本部を置く。生田氏は5歳から写経を始め、「書の心は仏門から」と1952年から60年までシアトルで布教と共に書道を広めた。師の没後は博子夫人が会長となり、遺志を継いで後継者を育てることに力を注いでいる。博子会長は日本の産経国際書会副会長も務め、日米で幅広く活躍している。中国の書に比べて、日本の書は柔らかな情緒を感じさせる。「筆の感触、墨の匂い、静かな教室の安心感。日系人はきっとそこから何かを感じ取っていたのだろう」と、米国に住む日系人の間で書道が普及した理由を生田博子会長は推測する。現在はソルトレイク・シティー、シアトル、ニューヨーク、ハワイ等と全米に渡り支部が点在し、日本にも東京、埼玉、大阪に支部が設置されている。

米国書道研究会シアトル支部は、毎年8月6日の広島原爆投下日にグリーンレークで行われる灯篭流しで参加者それぞれの願い事を書にしたためた灯篭作りをするなど、地域貢献活動も行う。シアトル支部長で産経国際書会評議員・審査員の加柴律子さんは、「書道」は芸術としての視点とは別に、人間性を形成ではするうえでの修業だと確信しているという。「『道(どう)』 なんです。上手、下手の問題でなく、最終的にはその人の心、生き様が見えてくるものです」。集中力が決め手の書道は、自分との闘い。地道なチャレンジであり、自分を見つめる手段でもあるという。「字の形ではなく、心が落ち着いていないと字が粗雑になります。分かる人が見れば、形が良くても、魂が入っているかどうかわかってしまう」。こうした加柴さんの観点は、「書の心は仏門から」という故生田観周師の言葉が原点になっているといえるだろう。仏門の家に生まれて幼い頃から何百回とお経を書き写すことで書を学んでいった生田師の書は「芸術」ではなくて「生きる道」であり、その精神が米国書道研究会の書道家には根付いていることがうかがえる。

シアトル支部は毎週水曜夜日蓮宗仏教会に集まり、臨書から始めて創作に持っていけるように、自分を磨く場を提供している。

米国書道研究会シアトル支部連絡先:

加柴(206)232-9875、藤井(206)230-0765

(天海幹子)

東京都出身。2000年から2004年までジェネラルマネージャー兼編集長。北米報知100周年記念号発刊。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。