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リンク・ライトレール、トランプ政権下で危ぶまれる連邦政府補助金

シアトル都市圏をつなぐリンク・ライトレールの拡張工事が各所で進んでいる。サウンド・トランジットは10月3日付のプレスリリースで、ダウンタウン・ベルビュー地下のトンネル開通工事の約3分の1の工程が終了したと発表した。トンネルは、110th Ave.の下をMain St.から6th St.まで通り、レッド・ライオン・ホテル向かいに建設中のイースト・メイン駅とトランジット・センター付近に建設予定のダウンタウン・ベルビュー駅とをつなぐことになる。シアトルとベルビュー間を約10分でつなぐイースト・リンク・ライトレールは2023年に開通予定だ。ワシントン大学駅から伸びるノースゲート方面拡張工事も2021年に完成予定。同拡張路線の地下トンネルはほぼ完成しており、現在は各駅の施設工事が進められている。さらには、ウエスト・シアトル方面およびバラード方面への拡張プロジェクトも9月28日に同公社の執行役員会で正式に認可された。

一方で、工事予算の確保は難しい局面を迎えている。トランプ政権が、連邦公共交通局(FTA)による全米各都市の公共交通機関新設への補助金について、2018年度予算の白紙撤廃を今年3月に国会提案したからだ。同2018年度予算には、リンク・ライトレールのリンウッド方面拡張工事に対して11億7,400万ドルの補助金、そしてフェデラル・ウェイ方面拡張工事に対して5億ドルの補助金が含まれている。予算が白紙撤廃されれば両拡張プロジェクトに大きな影響が生じる。2016年11月に地域の住民投票で可決されたウエスト・シアトル方面およびバラード方面の拡張を含むサウンド・トランジット第3期拡張計画(ST3)の全体予算538億ドルのうち47億ドルはFTA補助金を見込んでいる。したがって、トランプ政権が今後も公共交通機関投資への予算減を進めた場合、ST3を含むサウンド・トランジットの長期的なシアトル都市圏公共交通網計画に影響を及ぼすことになる。

リンク・ライトレールの拡張計画を支援するワシントン州下院議員のプラミラ・ジャヤパル氏は、サウンド・トランジットのプレスリリースを通して「地域経済を強化するため、路線延長は非常に重要。深刻化する交通渋滞解消のためにも不可欠だ」とコメント。「(延長計画の実行のためには)連邦政府の財政的支援が必要」と訴えた。ジャヤパル下院議員は、これまでサウンド・トランジットへのFTA補助金予算確保に尽力してきた人物。

人口が急増するシアトル都市圏。深刻な交通渋滞解消への解決策として、また車より環境にやさしい交通手段としてライトレールの拡張計画は地域の住民投票でも過半数のサポートを得ている。現在はワシントン大学からアングル・レイクを結ぶ14駅が稼働しており、地元住民の足として着実に利用者数を伸ばしている。8月のサウンド・トランジット発表によれば、2016年から2017年にかけてライトレール利用者数は約14.5%増加した。一方で、公共交通機関への税金を使った公共投資を嫌う保守派住民からの反対も根強い。トランプ政権の誕生による連邦予算引き締めは逆風になっている。サウンド・トランジットは、FTA補助金予算の国会承認に向けて働きかけを続けていく。ノースゲート拡張工事とイースト拡張工事はは計画通りに進められる予定だ。

(室橋美佐)

編集ライター。金融機関で勤務の後、留学のためシアトルへ。毎日の小さな「オモシロイ」を求めて日々シアトルを探索中。テクノロジーの町にいながらアナログを楽しむ関西人。