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ボブ・ハセガワ、シアトル市長立候補へ

文:松崎 慧

5月9日、ワシントン州上院議員で日系三世のボブ・ハセガワ氏が、ダウンタウンにあるウェルズ・ファーゴ前で、シアトル市長選挙への立候補を表明した。同氏は、「税金は大銀行のためではなく市民の利益のために使われるべきだ」という信条から、公営銀行の設立を長年主張してきた。ハセガワ氏は、今回の市長選は「公営銀行設立をシアトル市において実現する機会になりうる」と述べ、「シアトル市民は収入や治安の不平等性に疲弊している」と語った。

ハセガワ氏が立候補を表明した翌日の10日には、現市長エド・マレー氏が今年2月に表明していた再出馬の意向を取り消した。リベラル派のマレー市長は、2014年から現職。2016年11月には、移民・難民の受け入れを制限するトランプ大統領の政策を批判し、シアトルが不法移民に寛容な措置を取る「聖域都市」であると宣言をして注目を浴びた。その他、市内最低賃金の増額、アフォーダブル・ハウジングと呼ばれる低所得者向け住宅建設を促す住宅政策、積極的なホームレス保護政策など、リベラルな都市政策で議論を呼んだ。シアトル市民からの評価は高く、再選にも意欲的だった。

しかし、今年4月、1980年代に当時15歳の未成年だった複数の少年に性的虐待をしたとして、被害者本人を語る男性らに訴訟を起こされた。これに対してマレー市長は事実無根だと否定し、「私がセクシャルマイノリティやLGBT問題に尽力している今、1980年代の出来事が持ち出されるのは不自然だ」と政治的陰謀論を主張し、医学的根拠もないとしてきた。だが、市長の急激なイメージダウンは避けられなかった。

今回立候補したハセガワ氏は、米運送会社UPSの運転手として働いた経験から労働者の団体交渉権の大切さを学んだ。ビーカンヒル出身で日系人でもある同氏は、第二次世界大戦中に強制収容された自身の家族についても触れ、「市民権と自由は非常に大切であり、あらゆる手段で守っていかなければならない」と強調している。

今回の市長選挙には、ハセガワ氏の他、元市長のマイケル・マクギン氏、都市設計家で市民活動家のキャリー・ムーン氏、法律家で活動家のニキータ・オリバー氏などが立候補を表明している。

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。