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シアトルの地震リスクと緊急時対策

文:松崎 慧

2011年の東日本大震災から6年、昨年4月の熊本地震から1年が過ぎた。地殻のプレートが重なり合う新減退の上に位置する日本は、古くから天災の多い国であり、たびたび地震や津波の被害を受けながら何度も復興の道をたどってきた。

地震は日本だけで起こるものではない。シアトルも地震の起きやすい地域であることを知っているだろうか。聞いたことはあっても、具体的な対策をしている人は多くはないのではないか。

1946年にバンクーバーBCで起こった地震から来月で71年目をむかえる。マグニチュード7.3を記録したこの地震は、カナダ史上最大規模であった。死者2人のほか、建物の崩壊や地盤沈下、地滑りなどの被害を引き起こした。バンクーバー島周辺の煙突の75%が破損したといわれ、その揺れは200キロ以上離れたシアトルでも計測された。

アメリカ西海岸は、日本と同じく、太平洋を取り巻く巨大な火山群である環太平洋造山帯に位置している。カリフォルニア州を縦断するサンアンドレアス断層は、しばしば地震を誘発している活断層だ。さらにシアトルには、ピュージェット湾とダウンタウンを東西にはしる「シアトル断層」が存在している。

シアトル市は、将来に起きうる地震や津波の被害を予測し、防災マップを公開している。シアトル断層は、過去3000年の間に3、4回活動しており、最後の活動は1100年前。同市は、今後50年間にマグニチュード6.5以上の地震が発生する確率を84%、マグニチュード9.0以上の地震確率を14%と発表している。更には、77%の住民が災害対策を充分にできていないとし、ホームページ上で対策を促している。

戦後最大の地震といわれた2011年の東日本大震災では、3月11日の本震発生後も震度5レベルの余震が一か月近く断続的に起き、予断を許さない状況だった。そんな中、すでに実用化されていた日本の「緊急地震速報システム」は、大きな注目を浴びた。これは、地震計が捉えた初期微動から本震の震度や震源を瞬時に予測して、テレビやラジオ、携帯電話に送信するものだ。震源からの距離によって、本震の数秒から数十秒前に警報を受けることができる。たかが数秒、されど数秒。日常を突如変えてしまう地震に対して、心の準備ができているか否かは、歴然とした差につながるだろう。

近年、米国地質調査所がカリフォルニア州で試験運用を行う緊急地震速報システムが、ワシントン州とオレゴン州にも拡張された。地震発生の際に上下水道の破裂を未然に防ぐなど、公共設備への活用に期待がかかっている。しかしながら、一般利用にはまだほど遠い状態だ。

今月3日以降、シアトルの北に位置するキサップ半島では計13回にわたる軽微な地震が観測された。これは将来的な地震に直接つながるものではないとされているが、大きな地震発生の可能性がないわけではない。非常食を準備したり、緊急時の対処法について家庭で話し合う機会を持ってもよいかもしれない。

N.A.P. Staff
北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。