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精神病患者と自殺 銃、薬との接点に大きな課題 防止啓蒙へ、ワ州議会で議論

銃や薬の問題が蔓延する米国社会。ワシントン州もまた同じ状況を抱えている。2014年には1111件の自殺があり、7割が銃の使用、服毒、薬剤過剰摂取で占められるという。

州都オリンピアで1月25日、オリンピアで自殺防止に関するイベントが開かれた。2014年に自殺した1111人の慰霊の墓標が置かれ、自殺の影響を受けた50人以上の関係者たちが出席。それぞれの経験を踏まえ、自殺者と銃、薬との接点が、問題の背景として訴えられた。

演説者の1 人となったデビッド・ヤマシタさんの母親パティーさんは2014年に死去。薬剤の過剰摂取が原因だったという。

「母親がそういうことをしようと決断したとは到底思えない」とヤマシタさんは語る。動物愛護や料理など家庭での生活も大事にしながら、IT企業の管理職でキャリアを積んできた。「母は自分にとってヒーローでした」

多忙な中、パティーさんに影を及ぼしたのがアルコールだった。依存症となり、治療に臨む傍ら、会社からの解雇を告げられた。新たな職が見つからず精神不安定となり、やがて日々の薬剤摂取の服用量をコントロールできなくなった。

「自殺への後ろめたいイメージがある。精神病は治療できるという事実が、当事者達に不明瞭なのだと思います。完治することがあると母が認知できていれば」とデビッドさんは話す。

ワシントン州の自殺件数の7割に及ぶ原因となる銃使用、服毒、薬剤過剰摂取。要因として、各住居での保管状況が問題視されている。

ワシントン大学社会学部を軸に現在、自殺防止に取り組む非営利団体Forefront:I n n o v a t i o n s i nSuicide Preventionが活動に力を入れている。銃所有者や銃火器取扱業者、薬局などに対し、自殺を敢行する可能性のある住民と、銃や薬の接点を制限させることが狙いだ。

「銃火器を家に安置しておく最大のリスクは、侵入してきたものに使われてしまうことだとよく考えられます」とForefront 共同設立者のジェニファー・ステューバーさんは語る。「しかし本当のリスクは家の中に潜んでいます。家の中に子供や落ち込んでいる人がいる、あるいは訪ねていたら。彼らこそが人々が気づいていないリスクになります」

同組織はこれまでの過去4年にわたって実施されてきた5つの議案をサポート。新たに下院議案2 7 9 3 号の審議が、1月26日の司法委員会会合に先立って始まった。同議案は、銃所有者やシアトル市、キング郡健康問題部門などからも支持を集めている。

詳しくはwww.intheforefront.orgまで。

(情報提供 = ワシントン大学、日本語編集 = 白波瀬 大海)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。