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プライドと多様性アピール 相互に認め合う社会目指し パレードに 40 万人参加

年間行事であるシアトルプライドパレードが 26 日行われた。今年のテーマは「The Future of Pride( プライドの未来 ) 」。ダウンタウンの4番アベニューから2番アベニューに集まった約40 万人のの観客、参加者はLGBTQ関係者の平等と自由を掲げ、コミュニティーの多様性を内外にアピールした。個性豊かな衣装を身にまとった参加者に加え、シアトル警察やグーグル、 スターバックス、コミュニティーカレッジなどの協賛団体も参加し、多様な演出で会場を盛り上げた。

去年の同日には連邦最高裁で同性婚が合法化。法の下の手続きや平等を保障する合衆国憲法 14 条をもとに米国内すべての州で「同性婚の自由を拒否されることはない」という決定 がなされた。

パレード当日はシアトル市のエド・マレー市長が、パートナーのマイケル・シオサキ氏と共に登壇。市長はセクシャルマイノリティーの若者保護やLGBTQコミュニティーに対する差別反対法、そして同性婚の法的保証を支持してきた。会場では同性カップル一組の結婚 宣誓の立会人を務め、イベントは最高潮の盛り上がりを見せた。

6月初旬から街中にはシンボルである虹色が掲げられ、プライドパレードへ向けた盛り上がりを見せる当地。今年で42 回目となるイベントは、 47年前の同性愛者が集うナイトバーでの出来事が起因となる。

1969年6月 28 日、当時イリノイ州以外で同性間の性交渉は違法とされており、ニューヨーク、グリニッジ・ ヴィレッジ地区にある「ストーンウォール・イン」というナイトバーに市警察による立入調査が行われた。その場に居合わせた同性愛者たちは抵抗し、暴動を起こす。警察は撤退し、 翌日バーの前に同性愛者に対する差別撤廃と彼らの自由を訴えるスローガンを掲げた人々が押し寄せた。この一件が、全米各地で行われるプライドパレードの契機となり、同所とその周辺は 24 日、オバマ大統領によって国定史跡に指定された。

オーランドのナイトクラブで米史上最大の犠牲者を出した 12 日の銃乱射事件を受け、プライドパレードの主催者側は「今年は今まで以上に自分たちの権利のために立ち上がり、 コミュニティーに誇りを持っていきたい」と発表していた。 パレード当日、参加者や観客は「オーランドと共に」というステッカーや旗を身にまとい、犠牲者を弔う姿も見られた。

今もなおLGBTQコミュニティーに対する差別は存在する。「自分が自分らしくあることを誇らしく思えるように」 と権利を主張する人々がいる一方で、当日や前日に行われたキャピトルヒルでの関連イベントでは、「神はあなたを許さない」「同性愛は罪だ」などと書か れた看板を持つ宗教団体のメンバーの姿も見られた。パレード参加者と議論する場面もあったが、お互いの意見は平行線で歩み寄りは見えない。

パレードではLGBTQの権利を主張するだけではなく、差別反対の意思を示す言葉が至る所に見られた。それぞれが 自分のプライドを持ちつつ、互いを認め合える社会になるた めに。思想やコミュ ニティーを超えた共存への模索は続く。

(記事・写真=大間 千奈美)

N.A.P. Staff
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