ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)など配車アプリのサービス提供が拡大する一方で、利用者が被害に遭う凶悪犯罪も多発している。キング郡はこうした犯罪被害を防ぐ対策として、配車アプリ登録ドライバーに対する新たな規制を設けることを議会で検討していると、5月8日、地元紙『シアトル・タイムズ』が報じた。現在は両社とも、ドライバー登録者には事前に第三者機関であるチェッカー(Checkr)によるバックグランドチェックを行っている。キング郡の登録ドライバーは3万2,000人に上るが、今後は車への登録マーク提示や資格取得前の指紋採取を義務付けるなどの規制が加わる可能性がある。
配車アプリ登録ドライバーによる性犯罪は、アメリカ全国で大きな問題となっている。過去4年間で訴えられたウーバーのドライバーは100人を上回り、そのうち少なくとも31人が有罪判決を受けた。シアトルで報告された被害も少なくない。昨年12月16日、バラードのバーから帰宅するためにウーバーで配車した車を待っていた女性を、ウーバーのドライバーになりすまして乗車させ、性的暴行を加えたとして34歳の男が逮捕された。また3月8日には、キャピトルヒルのナイトクラブからベルビューに移動するためリフトを利用した女性が車内で居眠りをしている間にわいせつ行為を受けたとして、42歳の男が罪に問われている。
現行のドライバー登録システムでも、過去5年間にひき逃げや飲酒運転、その他自動車犯罪歴あるいは性犯罪歴を持つ者はドライバー登録ができない。しかし、暴行や詐欺、強盗その他の犯罪歴を持つ者のドライバー登録の可否についてはキング郡の裁量となっている。ウーバー、リフトの両社はすでにバックグラウンドチェックを最低でも年に1度実施するが、昨今の事件増加を踏まえ、キング郡では安全性をさらに強化すべく、規制に乗り出していくと見られる。
3月29日には、サウスカロライナ州で、ウーバーと勘違いして車に乗り込んだ女子大生が殺害される事件も起きている。利用者側も配車アプリのサービス利用時に起こり得るリスクを念頭に置いて、乗車前にナンバープレートや運転手の顔写真を確認するといった安全対策を講じるべきだろう。
(小川祐理子)