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今年もサクラコンが開催 特別ゲストは漫画家、士貴智志さん!

サクラコンでは毎年、日本からの特別ゲストに注目が集まりますが、今回
漫画家の士貴智志(しきさとし)さんが日本から参加。会場の様子をレポートすると共に、士貴さんへの貴重なインタビューもお届けします。

取材・文:坂元小夜

4月19日から21日までの3日間、ワシントン州コンベンション・センターで開催された「サクラコン2019」。人気のアニメやゲームが勢ぞろいする一大コンベンションで、今年21年目を迎えた。1998年にタクウィラで行なわれたアニメ・ファンのためのイベントがそもそもの始まり。その後、またたく間に成長し、北米最大規模のアニメ&ゲームの祭典となった。今回も全米各地から、多くのコスプレーヤーが、シアトルのダウ ンタウンに集結。連日、大いに盛り上がった。

日本のゲーム機が設置され、ゲームセンターさながら。

アニメ・ブームは驚くことではない?
プロの漫画家の本音

うる星やつらの功績

私が中学生の頃、週刊漫画誌『少年サンデー』に高橋留美子さんの『うる星やつら』が掲載されていました。当時、少年漫画と少女漫画はまったく別で、こうあるべきというような、見えない強固なバリアがあったんです。それなのに、『うる星やつら』は、ビキニを着た宇宙人の天真爛漫なラムちゃんがメイン・キャラクター。少年向け、少女向けのジャンルの壁をぶち壊していて、大きなショックを受けました。読んでいてとても開放感があり、私も自由な作品を作りたいと、漫画家を志すようになったんです。

漫画家として駆け出しの頃は、漫画やアニメが世界中でこんなに受け入れられる未来はまったく想像していませんでした。その後のテクノロジーの進化と、メディアの発達のおかげです。日本で漫画を描いていると実感が湧かないので、サクラコンのような海外イベントに呼ばれて初めて、世界的なアニメ人気の高まりを感じる自分がいます。実は、今ここに自分がいるというのは、少し不思議な気分なんです。昔の自分に言ってやりたい。「おまえ、世界で呼ばれてるぞ」って(笑)。

今は漫画で表現できる幅も広がり、アマチュアもプロも、読者に作品を手軽に届けられるようになっています。使われる音楽、声優、キャラクター・グッズ、コスプレ衣装など、ファンが楽しめるコンテンツも増え、ビジネスの可能性が広がりました。昔を知る世代は、最近の盛り上がりについていけないという感覚を抱くかもしれません。私は、漫画の世界に長くいるので、ストーリー以外のコンテンツを愛するファンたち の活動やそれを支える文化が、実は水面下でずっと育まれてきたことを知っています。アンダーグラウンドの文化がようやく表に出られる環境が整ったのだと理解しています。

漫画家として大切にしていること

日本の漫画やアニメは、外国人が日本に興味を持つきっかけになり、また、日本の経済や文化の面で重要な役割を果たしています。漫画家として、自分の描く世界がどのような影響を与えているかなんて、正直そこまで考えていないんです。あくまで、日本で描いた日本の読者に対する日本語の作品。いいシーンを描きたい、固定観念にとらわれない自由な発想の作品にしたい、そう思って描くだけです。 私はまず、自分が描きたいシーン、イメージを絵にして、「この絵を描きたいから作る」というスタンスで作品を作っています。たとえば『進撃の巨人』のように原作者が別にいる場合でも、自分のイメージを絵にしてから原作にストーリーを肉付けしていきます。自分が描きたいシーン、そのキャラクターにいちばん合う表情、アクション・シーンが上手に描けた時は素直にうれしい。その喜びが、作品作りの原動力になっています。

プロになって改めて思うのは、うる星やつらを読んだ時の感動、作者の高橋留美子さんに対する尊敬が、自分にとっての原点だということ。 常にそれを忘れず、読者に息苦しさを感じさせない、自由な作品を届け、壁を壊していきたいと思っています。

士貴智志(しき さとし)◼️漫画家、イラストレーター。愛知県出身。代表作に『進撃の巨人 Before the fall』(原作・諫山 創)『RIOT』『神・風』『光と水のダフネ』『XBLADE』など。現在、『チャンピオンRED』(秋田書店) にて『どろろと百鬼丸伝』(原作・手塚治虫)を連載中。

 

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。