By 佐々木 志峰
「暑い、暑い」と過ごした7月上旬。それでも、このシアトルの天候は本当に恵まれたものだと痛感させられた。全米各地を襲った熱波。中旬に出張予定が入っていたアリゾナ州の様子を見てみると、最高気温で華氏115度とある。後で知人から聞けば、その時期にラスベガスは120度に達したそうだ。
筆者がアリゾナ州を訪れた時も連日最高気温は三桁に達し、華氏105度を超えた。当地であれば、この気温は記録を作った2021年の猛暑が記憶に蘇るところだろう。
気温以上に驚かされたのは宿泊先で見た光景だった。突如、スマートフォンのアラート(警報音)が鳴り何事かと目をやると、国立気象局から砂嵐警報が発せられたとある。状況や場所によっては、ふいに視界がなくなることがあるという。運転中であれば車を脇に止めて待機し、ライトも消してブレーキから足を離すようにとある。
暴風雨の警報は当地以外でも何度か遭遇し、ある中西部への出張では夜中に地下への避難を呼びかけられたこともあった。別の機会では気を付けながら宿泊先の外に出てみたこともあるが、今回はさすがに部屋での待機を選んだ。
やがて大きな雷音が響いてきた。窓から外を見ると、きれいな夕焼けの写真を撮り、夜入りの後も家々の明かりが広がっていた街の景色が、ほとんど見えなくなっていた。視界がほぼない。周りに立つ木々や駐車車両のカバーの揺れ具合で嵐の強さは一目瞭然だった。間を置かずに雷も光り続ける。30分ほどしただろうか、外から伝わる音に変化があったので再び目をやると、今度はとてつもない豪雨に変わっていた。
予報には記されていなかった大荒れの天候。翌朝外を見ると、あれほどの雨量が嘘のように地面はほぼ乾ききっていた。筆者にとって初めてとなる別世界のような経験。ただ驚きでしかなかった。
自然の力には太刀打ちできない――。再び100度に達した気温から帰路に就く。シアトルが近づき、眼前に広がる緑色の木々に心が安らいだ。