シアトル市内インターナショナル・ディストリクト(ID)の日本町にある歴史建築物のパナマホテル(写真英語1面)が売却先を探している。昨年春に国宝建築物の認定を受け、日系史を語る歴史施設の維持を担う新オーナーへ売却される見込み。13日付の地元メディアKPLUが報じている。
パナマホテルは1910年に建設された。6番アベニューとメインストリートの交差にある立地から日本町の象徴的な存在として知られる。地下には、日系移民に親しまれた銭湯「橋立湯」があったほか、第二次世界大戦の日系人強制退去の際に日系関係者から預かった荷物が置かれている。1985年にオーナーとなったジャン・ジョンソンさんや有志らが、一階にあるカフェスペースなどで歴史保存活動を進めてきた。
2006年には内務省から歴史建造物に認められたほか、小説『(あの日パナマホテルで)』の人気により注目が高まった。昨年にはナショナル・トラストから、当地では初となる国宝認定も受けた。
同認定では、ナショナル・トラストによるパナマホテルの歴史的資料の保存や、建物の維持のための適切な新オーナーへの経営移行といった協力が行われることも約束されている。
K P L U によると、I D で低所得者向けアパート建設事業などを行う地域非営利団体Interim Community D e v e l o p m e n t Association が買収に興味を見せている。数ブロック西では、低所得者向けアパート「ヒラバヤシプレース」の建設を進めており、関係者もパナマホテルに残される歴史、日系史を超えた社会正義としての役割に深い理解を見せている。
一方、歴史保存と今後のビジネスとのバランスにおいて、建物維持において厳しい財務に直面することも予測される。
ジョンソンさんは売却額は明らかにしていないが、今後も歴史あるパナマホテルとして存続することを第一の条件としている。
(N・A・P)