「イノベーション」をテーマに20日、毎日新聞論説委員の野沢和弘氏とアキュセラ社会長兼社長で医学博士の窪田良氏による講演が行われた。大村昌弘総領事や日本人大学生ら約70人が参加した。
野沢氏は2016年4月から日本で施行された障害者差別解消法の原案作成にかかわった経緯と法案成立の過程を語った。「政府は自分で生活できない人を助けるべきか」という調査に対し、日本国内で「助けるべきではない」と回答する人は、米国の28%と比べても高い38%。原案作成の過程で出会った多くの障害を持つ人、その家族の経験と共に、第二次世界大戦後から現在に至るまで、日本福祉の制度の移り変わりの中でも根本にある国民の心理を指摘した。
同氏は行政、民間さらには異なる障害者同士で議論を深めることの重要性をあげ、異なる価値観がぶつかることで初めてイノベーションが生まれ、法案成立につながったと話した。
窪田氏は米国でベンチャー企業アキュセラ社の代表に至るまでの経緯を語った。1960年代、当時小学生だった窪田氏は父親の仕事のため3年間米国で生活。当時、「日本人は米国の知的財産を盗んでいる」といった日本人に対する負の印象を感じてきた。しかし近年では、前世代の活躍の影響もあり、日本人に対する視点も変わってきたことを実感したという。
米国でイノベーションが起こりやすい理由として、多様性や、失敗を受け入れる土壌、リスクが上がってもベストの選択に挑戦する傾向、雇用の流動性などをあげ、その風潮は日本にも必要になっていくと話した。
両氏に共通していたのが違いを否定するのではなく、許容し、そこから学ぶという点。講演後に行われた懇親会では、大学生と共に日本の社会でどのようにその点を実現できるのか、意見交換する様子が見られた。
(大間千奈美)