当地恒例の夏祭り。毎週末各所で、様々なテーマをもとに開かれている。シニアアパート「川部メモリアルハウス」の夏祭りは28日に建物前の18番アベニューを封鎖して行う。今年で5年目となり、8月末のコミュニティー恒例行事として定着している。アパート住民が積極的に協力、イベント規模は年々大きくなっているという。
2012年、アパートの改装事業で「予算外」品目だったエクササイズ器購入を目標として始まった夏祭り。毎年、徐々に規模を拡大、昨年は400人参加、9800㌦を売り上げる行事となった。今年も午前11時から午後4時の限られた時間の中で、地元コミュニティー団体やアクティビティーのブースが置かれ、太鼓、踊り、剣道といった舞台パフォーマンスも披露される。今年の目玉は爬虫類を披露するレプタイルマンという。
今年の目標は住民が利用する14人乗りバン。すでに補助金などを受けており、目標金額達成へ、夏祭りの成功を目指している。
コニー・デバネー事務局長によると、入居者の14%が80歳以上の高齢者で移民者が多く、公共交通を利用する上でも言語面での苦労が聞かれるという。アパート私用のバンで、買い物、病院訪問、桜鑑賞などの外出アクティビティーが容易になる。
夏祭り実行委員長のビー・キヨハラさんも「(バンを利用することで)みんなで一緒に何かをできる住民同士のコミュニティー作りの助けになれば」と話す。
川部メモリアルハウスは1972年に建設された。発起人は故川部ハリー・惣太郎さん。第二次世界大戦後、当地で再生が進む日系社会の中、仕事、住居探しに苦労を続ける日系一世の姿を目の当たりに、彼らを救うべく低所得者、マイノリティー向けの居住地建設を目指した。川部さんはアパート完成を前に死去したが、その精神は今になるまで残り続けている。
2012年に40年のローンプログラムの支払いを完了。次の40年に向け、各部屋のキッチン、地下のアクティビティールーム改装を3月に予定する45周年行事までに行う。
地域の住民層は大きく変化を見せている。地価も上がり、若い家族の住民も増えた。一方、日系教会などは川部メモリアルハウスの周りに多く点在、高齢者を中心に日系コミュニティー関係者が集い続ける環境は残る。日系入居者は増加傾向にあり全体の3割になるという。
入居者が協力 懐かしい味も
同夏祭りでは住民が積極的に協力する。年に1度のイベントを楽しみに食べ物販売を準備する住民も多い。
同アパートに住み5年になる鑓義雄さん(82)(写真英語8面)は、京料理のシェフとして当地で長年にわたり活躍。日本食レストラン「渡月」の弁当は当地コミュニティー関係者の記憶に新しい人気の一品だった。
「スタッフが一生懸命頑張っている。何かできることがあれば」との思いで、この夏祭りでも往年の腕を振る。これまでは弁当を作り、イベント前に住民が買い付けて売り切れてしまうなど変わらぬ人気を誇ってきた。今年は趣向を変えて冷やし中華を作るという。「食べてくれた人の思い出にでもなってもらえれば」と語る。鑓さん特製のたれを使い、「おいしいですよ」と笑みを浮かべる。
鑓さんをはじめ、住民それぞれが、自らできる範囲で協力。入居者を含め、関係者による「手作り」の夏祭りは今年も盛り上がりを見せそうだ。
(佐々木 志峰)