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「みなしご元禄津波」再版開始 300年前の日米の縁を追う 当地で予測される大地震啓蒙へ

近い将来の大地震の可能性が指摘されるノースウエスト地域。準備や対策などに乗り出す市民が多数出た昨年だが、それに合わせた形で、当地で過去に発生した地震調査を行った『T h e O r p h a n
Tsunami of 1700 (みなしご元禄津波)』が啓蒙書として再版された。

約300年前に太平洋岸で発生したカスカディア大地震。大きな津波は沿岸部を飲み込み、オーシャンショア北のコパリス川には現在も枯れ松の木々が立ち尽くす「死んだ森」が存在する。

米国側で長年の謎とされてきた大地震と死んだ森の調査を進めていた研究グループは、津波が太平洋の反対の日本にたどり着き、東北から和歌山に至るまで多くの資料が残されていたことを発見。1700年に発生したマグニチュード8から9クラスの大地震の実態を明らかにした。

日米による共同研究に加え、江戸時代に残された筆で書かれた文献の多くは、近代日本の様子を知る文化的な要素も含まれる。

ほとんど知られていかなった大津波の存在を明らかにしたこともあり、10年前の出版後には,州沿岸部に津波避難路の標識が出されたという。

共同著者で本紙英語面の寄稿者でもあるデービッド・ヤマグチさんは、「日米による共同作業で少ない人員でやり遂げた一冊。未来の世代に残そうとそれぞれが力を合わせた作品です」と語る。同地震はノースウエストで発生した最後の大地震だったこともあり、今後発生する可能性のある大地震を前に「どのように地震を知り、何をすべきか」を学ぶ啓蒙の一冊となりそうだ。

ワシントン大学出版から30㌦で再版されている。

(佐々木 志峰)

佐々木志峰
オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。