ホロコーストをはじめとする差別と迫害をテーマに演奏活動を続けるMusic of Remembrance(MOR)は、活動20周年を迎える2017&2018シーズンに、日本人と日系アメリカ人に基づく2つの委嘱作品を初演する。作品の一つは、シアトル在住のフランス系アメリカ人作曲家クリストフ・シャニャール氏が、日系アメリカ人の強制収容を題材にして作り上げたもの。もう一つは、日本人作曲家の藤家渓子氏が、広島と長崎の原爆生存者が残した詩を表現した作品。シャニャール氏の作品は2017年11月5日に、藤家渓子氏による作品は2018年5月20日に、共にシアトル市内のベナロヤホールでコンサート公演される。チケットについての詳細は、2017年春に発表予定。
ミナ・ミラー(Mina Miller)によって1998年に創立されたMORは、差別や迫害の対象になった人々や、彼らの経験に基づく音楽の演奏と作品委嘱を行っている。ミラー氏は、「MORのルーツは、ホロコーストと、ホロコーストによって沈黙させられた人々の声を思い起こすこと。これらの出来事は、今日の世界にも深く共鳴する。歴史の教訓から学ぶためには、権利と尊厳を脅かされた人々の話を語り継ぎ、行動を起こすことだ」と語る。
真珠湾攻撃の後、アメリカに住む12万人以上の日系アメリカ人が、アメリカ西部に散在する収容所での生活を余儀なくされた。シアトル在住のフランス系アメリカ人作曲家クリストフ・シャニャール氏が、収容された人々が残した日記や手紙をもとに、苦渋に満ちた歴史ストーリーを紡ぎ出す。コンサートは、日本の伝統楽器と西洋のクラシック音楽楽器の両方で演奏される。歌手がナレーションも交えて語るストーリーに映像も重ねていく。
藤家渓子氏による作品は、広島と長崎の原爆生存者による詩をもとに、核戦争防止の緊急性を雄弁に訴えるソング・サイクル形式の音楽。藤家氏は、長崎市に在住する著名な作曲家。彼女の作品は日本でも頻繁に演奏されており、NHK交響楽団から名誉ある尾高賞を2度受賞している。