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日系4世ミュージシャン、ポール・キクチのステージ 「9066」がイヤーショット・ジャズで開催

ポール・キクチ氏(右)とハルコ・クロウ・ニシムラ氏(左)

シアトル秋の風物詩であるジャズ音楽祭「イヤーショット・ジャズ」。作曲家でパーカショニストのポール・キクチ氏による公演「9066」が11月3日、ワ州日本文化会館(JCCCW)で行われた。来場者が目と耳で日系人の歴史を体験する45分に、会場は地元からの観客や日系人で埋め尽くされた。

キクチ氏はワシントン州生まれの日系4世。現在、アート・インスティチュート・オブ・シアトルなどで音楽を教える傍ら、日系移民の歴史とその思いを音楽で表現する活動をしている。第二次世界大戦中に西海岸の日系人の強制収容を命じた大統領令、9066号が発令されて今年で75年目。「第三者がコミュニティーを代弁するのでなく、コミュニティー自体に『声』を与えたい」と今回の演出を考案した。

アイススケートをする少女
Image from David Tatsuno film, sourced from JANM, creative commons license

キクチ氏の演奏をバックミュージックに、観客は前面に設置されたスクリーンに流れる収容所の人々を映した無声録画を鑑賞。船から見えるシアトル・ダウンタウンに始まり、アメリカが日本からの攻撃を伝える新聞が目に飛び込んだあと、トパーズ、ツール・レイク、ハート・マウンテン、ミニドカの各収容所で記録された映像が映し出された。鏡に向かって髪をとかす少女、食堂で食事を囲む人々、パイプをくわえ囲碁をうつ男性たち。また砂嵐が吹く中で簡易に設置された舞台で日本舞踊を舞う女性、餅つきや鯉のぼりといった日本の伝統行事と文化を守って暮らす、収容所での日々を垣間見ることができた。

演奏された楽曲は、日系人の心のふるさとだった演歌や民謡といった当時のSPレコード(1950年頃にLP盤が出るまで主流だったレコード)の音源を元に、キクチ氏が新たに作曲したもの。シアトル在住の舞踊ダンサー、ハルコ・クロウ・ニシムラ氏がメロディーに乗せて歌った。

当日は、移民当時に日系人が持参した、現存するレコードのコレクション、強制収容所から帰省した日系人の一時収容所として機能していたハントホテルの資料も展示。レコードの中にはキクチ氏の音楽のバックグラウンドである曽祖父、善吉氏のコレクションも並べられた。

公演を終えて「素晴らしい気持ちです」とキクチ氏。また共演者のニシムラ氏は幼少期からいろいろな国を転々としながら育ったため、日本と日系人の歴史をあまり知る機会がなかったと言い、「(プロジェクトに)関わることができて光栄です」と語った。

(小林真依子)

編集ライター。金融機関で勤務の後、留学のためシアトルへ。毎日の小さな「オモシロイ」を求めて日々シアトルを探索中。テクノロジーの町にいながらアナログを楽しむ関西人。